4月馬鹿



弥「犬夜叉ァ(酒臭)、桜ももう終わりだなぁ・・」

関東某県に存在する、とある団地の一棟。
その4階、管理人遊丸の部屋で。

ガラスの盃片手に強か酔ってる弥勒が居た。
開けっ広げた窓から吹き込む夜風は生温く、
来るべき季節の予感を孕んで、しっとりと潤っている。

壁に凭れてぐいっと酒をあおると、
隣に寄り添う犬夜叉がしおらしくなみなみと酒を注ぐ。

弥「今日からもう4月か。桜も散って新緑の季節、だな。
  まあ俺たちは相も変わらず、だけどな。
  ホモなんてさ、やっぱ不毛なものなのかなぁ・・」

弥勒がそう愚痴りながら盃を干すと、犬夜叉は再び無言で酒を注いだ。

弥「今日はやけに飲ませるな?」

犬「・・・そうか?」

弥「ふっ、何考えてんだか知らないけど、あんまり飲ませると後がデキなくなるぞ?」

弥勒は意味ありげな笑みを浮かべて犬夜叉の顎を取り、唇をそっと寄せていく・・・

んが。

日頃の疲れも溜まっているせいか、
弥勒はそのままコクンと頭を垂れると犬夜叉の懐にしな垂れかかり、
それっきりくうくう寝息を立ててしまった。



犬「ふぇっふぇっふぇっ。ばーかめ。今に見てろよマヨネーズの仇・・・」
(※マヨネーズ:「WORKS/犬夜叉?七変化/犬ママ」参照)

犬夜叉が不敵の笑みを零すと、
それに相応じるが如く、窓の外の夜桜がサーッと風に舞い散った。



しばらく経って。
もうじき日付も変わろうかという頃。

犬「弥勒ぅ・・弥勒っ、起きてくれよぉ」

犬夜叉に肩を揺さぶられ、弥勒は酒と眠気と両方で重い瞼を無理やり開かされた。

弥「んぅ・・もう、今日はやめとこうぜ?犬夜叉ァ。
  そんなにヤりたけりゃ、悪いが一人でヤってくれよ・・むにむに・・」

犬「何言ってんだ、この色ボケっ」

弥「だからっ、ヤりたけりゃ一人でマス・・PPPPPP(放送禁止・笑)こいとけっつーの」

犬「ばか。そんなんじゃなくて、大事な話があるんだよ」

弥「ああ?」



いつになく真面目な口ぶりに、
ようやく弥勒は30トンはあるんじゃないかと疑うくらい重い頭を上げる。

弥「言っとくけど俺は浮気なんかしてねーからな」

犬「そんなコトじゃねえよ」

弥「じゃ何だ?あ、判った。アレだろ?あの・・押入れに隠してたエロビデオ。
  別に良いじゃねえかよ。アレでヌクのはお前が居ない時だけだ」

犬「押入れにンなモン隠し持ってたのか、お前・・・」

弥「・・・・・(墓穴掘ったか)。じゃ、一体何なんだよ?」



犬「あのな、弥勒。驚かないで聞いてくれ」

弥「ホモに今更驚くようなコトなんかあるかってんだ?」

犬「・・・実はな弥勒。俺、デキちゃったんだ

弥「何が」

犬「だから、コレ・・・」



犬夜叉は大きく膨らんだ自分のお腹を指差した。

弥「(ガガーン)」

犬「・・・・・」

弥「犬夜叉・・お、お前・・・・・太ったのか?(ちょっとショック)」

犬「んにゃわけねーだろっ、ボケェ!!デキちゃったのって言ってんだろぉが!!!



弥「だから、何――――」
と言いかけて、さすがの弥勒も思い当たったのかすっと青ざめる。

犬「・・・妊娠しちゃった、みたい・・・」
と、犬夜叉は出っ張った腹をちょっと苦しそうに撫でる。



弥「(再びガガーン)」

犬「お前、『俺の子供を・・』ってしょっちゅう言ってるだろぉ?
  な?良いよな?産んでも・・・」



弥勒は脳味噌を再起動させようと30トンの頭を左右に振ってみるが、
酒を飲みすぎたせいで余計に頭痛を催しただけだった。

弥「ちょっと待て犬夜叉。いくら何でもそれは無いだろう?
  男のお前が妊娠するはずは、無い・・うん、そうだそうだ。そんなワケ無い」

犬「でも、お前は男だろぉ?」

弥「・・・・・」

犬「俺の中で出したろぉ?」

弥「・・でもでも、お前だって男だぞ?何でそんなコトが可能なんだ!?」

犬「それはな・・
  俺たちが余りに愛し合ってヤりまくり過ぎたからだ!!!きっぱり)」



弥「そ、そうだったのか!!!納得)」

犬「・・・(バカじゃねーの、コイツ;;)。
  だから、とにかく、こうなったからには責任取ってくれ」

弥「責任って・・まさか・・・」

犬「決まってんだろッ、結婚だよ、結婚♪♪♪(カラ〜ンコロ〜ン)」
そう言いながら犬夜叉は燦然たる輝きを放つ公的文書、婚姻届をででーんと弥勒の前に突き付けた。

プレイボーイの天敵「ケッコン」を迫られて泡を吹く弥勒を横目に見遣り、
犬夜叉はくくくっと笑いを噛み殺す。

犬「・・・(ざまーみろ、自業自得ってもんだ。
  大体あんだけヤりまくってりゃ本当にデキたって不思議じゃないぞ(<※こっちも馬鹿)」

弥「嗚呼、俺の青春(腐)も今日を限りに散ってゆくのか(涙)」

犬「さあ早く血判を押せ!」

弥「・・・犬夜叉、婚姻届はいつから血判を押すようになったんだ?」

犬「今からだよ」

弥「そうか(諦め)」



犬夜叉はその辺に落ちている(笑)エロ本を無造作に拾い上げると、
適当なページを開いて弥勒の鼻先に突き付けた。
そして、弥勒がドピュッと鼻血を噴出したところへその指をつけ、
「婚姻届」にガシッと判を押し付けた。

泥酔した上に唐突な宣告、更に否応無く鼻血まで噴出させられ既に失神状態に陥った弥勒を尻目に、
犬夜叉はその婚姻届をるんるん♪と額に入れて壁に飾る。



犬「すげー間抜け。弥勒の奴、酔いが覚めてこれを見たら何て顔するかな♪」
如何にも楽しそうにそう呟くと、犬夜叉はTシャツの中から半球形の物体を取り出した。



犬「中華鍋は投げるためだけにあるんじゃないんだぜぇv
  (<てゆーか、元々投げるためにあるのではない;;)」



いえいv・・
と、犬夜叉が中華鍋片手にピースマークでこのエイプリルフールの幕を閉じようとした時。
どこからともなく・・・

ナレーション(鬼の管理人):
「がしかし・・翌朝起きて憤慨した弥勒にまたもやヒーヒー言わされることになる犬夜叉であった。
 めでたし、めでたし



犬「余計なシナリオ書くんじゃねぇ!!!」



おしまい。





written by 遊丸@七変化


別名「中華鍋の逆襲」(笑)。
馬鹿と言えばどっちもどっちですが、ココの管理人が一番馬鹿ですな(自嘲)。