二度目の京都ミラツア

〜大転換以後の京都を巡る旅

前 編




◆旅行日:2013年5月24日〜5月26日

◆行程:
※下線はミラージュスポット
※グレー文字は後編にて

◇5月24〜25日:
海浜幕張バスターミナル→(夜行バス)→京都駅→(市バス)→野々宮バス停→(徒歩)→トロッコ嵯峨駅→(トロッコ列車)→トロッコ亀岡駅→(トロッコ列車)→トロッコ嵐山駅→(徒歩)→嵯峨とうふ 稲(ランチ)→(徒歩)→天山の湯(立ち寄り湯)→(徒歩)→山越中町バス停→(市バス)→龍安寺前バス停→(徒歩)→龍安寺→(徒歩)→立命館大学前バス停→(市バス)→北野天満宮バス停→(徒歩)→北野天満宮→(徒歩)→北野天満宮バス停→(市バス)→京都市役所前バス停→(徒歩)→木屋町通り→(徒歩)→フランソア喫茶室→(徒歩)→四条大橋→(徒歩)→四条京阪前バス停→(市バス)→銀閣寺道バス停→(徒歩)→哲学の道→(徒歩)→東天王町バス停→(市バス)→四条河原町バス停→(徒歩)→うしのほね本店(夕食)→(徒歩)→河原町三条バス停→(市バス)→京都駅→(JR奈良線)→稲荷駅→(徒歩)→アーバンホテル京都

◇5月26日:
アーバンホテル京都→(徒歩)→伏見稲荷大社→(徒歩)→稲荷大社前バス停→(市バス)→京都駅前バス停→(市バス)→四条烏丸バス停→(市バス)→高雄バス停→(徒歩)→神護寺→(徒歩)→高雄バス停→(市バス)→四条烏丸バス停→(徒歩)→松富や壽(ランチ)→(徒歩)→錦市場→(徒歩)→四条烏丸バス停→(市バス)→東寺東門前バス停→(徒歩)→東寺→(徒歩)→羅城門跡→(徒歩)→羅城門バス停→(市バス)→九条河原町バス停→(徒歩)→京都駅→(新幹線こだま)→東京駅


◆同行者:パートナー


※このページの画像は、別サーバーに保存したものへ直リンクを貼って表示しています。不具合を見つけた場合、管理人までご一報頂けますと、大変助かります。




前年(2013年)7月に行った京都ミラツアは、『みなぎわの反逆者』に特化したツアーでした。しかし、裏四国以降(29巻『無間浄土』以降)にも京都が舞台になっているシーンはありますし、もう一度京都ツアーが必要だなと思っていたところ…、あれから一年弱、思いがけずその機会が訪れました。

と言うのも、京都のホテルの宿泊券が当たりまして。まあ、安いビジネスホテルなんですが。折角だから、京都に行こうと。
しかし、前年のことを思い起こしてみると…、JR東海で申し込んだパックツアーは、往復新幹線(こだま)+ホテル1泊(新・都ホテル)で1名19,800円。今回はツアーじゃなく、新幹線だけ取るとなると、「ぷらっとこだま」プランで往復19,600円…。その差200円じゃ、宿泊券が当たった甲斐もない!つうわけで、往路だけは夜行バスにしました。確か5〜6,000円だったかと(このレポートを書いている時点ではだいぶ値上がりしたようですが)。

↑の写真は、JR京葉線・海浜幕張駅の駅前。千葉県民の私たちはここからバスに乗ります。
バスは予定より少し早く、翌朝6時20分頃、京都駅八条口に到着。連絡通路を通って、中央口の方に回ってきました。


五月の青空に京都タワーが映えますね。去年は7月だったので暑くてかないませんでしたが、今年は気持ちよく旅ができそう。
まだ時間が早いので、京都駅前のバス総合案内所内にある「進々堂」にて朝食。


進々堂は京都では有名なパン屋さんチェーン店。こちらの京都駅前のお店は朝6時半から開いているとのことで、まるで夜行バスで京都入りした旅人のためにあるかのような存在です。
狭いため、テーブルのみで椅子はないですが、それでも充分。


戦い(夜行バス)の後のコーヒーが体に沁みる…(笑)。
バスの案内所が開いてから、「市バス専用一日乗車券カード」を2日分購入。500円で市バスの均一運賃区間が一日乗り放題になるカードです。


前回の京都ツアーでは電車や徒歩が多かったので、購入しませんでした。フリーパスは他にも「京都観光二日乗車券(2,000円)」というのがありますが、今回はこちらを買っても元が取れないので、500円の方を選択。


今回、二日間の行程で立ち寄る主なスポットを地図に落としてみました。例によって赤字はミラージュスポット(推定含む)。今回はミラージュスポット少ないですね。メインはやはり
神護寺。あと、京都駅の大階段に、綾子ねえさんの傷心スポット、四条大橋。『無間浄土』で綾子ねえさんと山根ゆかりが入ったと推測されるフランソア喫茶室なんてのもあります。それから地図に入れませんでしたが、木屋町通り東寺羅城門跡も名前だけ出てきました。

ミラージュスポットが少ない分、ミラージュとは関係ないところにも結構立ち寄っています。適当にお付き合い頂けると幸いです。
※飛ばし読みに便利なよう、ミラツア部分は背景を緑色にしました。

一日目は、嵐山でトロッコ電車に乗り、天山の湯で立ち寄り湯。それから龍安寺、北野天満宮を観光し、高瀬川沿いの木屋町通りを散策。フランソア喫茶室で休憩した後、夜闇の中、哲学の道でホタル探し。夕飯は先斗町のうしのほね本店で食べ、伏見にあるアーバンホテル京都で宿泊。

二日目は、伏見稲荷大社を参拝し、京都駅に出てから神護寺へ。神護寺から四条烏丸に戻り、松富や壽でランチ後、錦市場でお買い物。その後、東寺&羅城門跡を見学して、京都駅から帰路につきます。

と言うわけで、先ずは嵐山。京都駅前7時18分発、28号大覚寺行きの市バスに乗車しました。

写真は渡月橋を渡るバスの車窓から桂川を見下ろして。渡月橋をバスで渡るって何か変な感じ…。

嵐山エリアは、市バス均一運賃区間外なので、区間外部分の運賃190円を払って、「野々宮」バス停で下車。
「野々宮」バス停から歩いて、8時過ぎに、「トロッコ嵯峨駅」に到着。

運営する嵯峨野観光鉄道は、JR西日本の子会社。廃線となったJR路線を復活させるため、1990年に立ち上げた会社だそうですが、当時は社員8名、社長は左遷されて来たような状態で、いつ潰れてもおかしくないと言われていたそうです。

今では年間100万人近くの観光客が訪れるというのですから、相当の苦労と工夫があったんでしょうね。全国に廃線&廃線になりそうな路線はたくさんありますが、やり方次第で生き残る道もありうるということでしょう。
紅葉の季節が特に人気だそうですが、新緑の時期もなかなかの人出。

土曜日だからというのもあるんでしょうけれども、始発列車の発売開始前にすでに行列が。

トロッコ列車は全席指定で、予約購入もできるんですが、側板のない「ザ・リッチ号」は当日でないと買えません。
始発列車まで1時間くらい時間がありましたが、蒸気機関車が展示してあるホールなどもあるので、ある程度の時間つぶしも可能です。


出発間近になり、ようやく入場。
こちらがその「ザ・リッチ号」。すごいネーミングだな(笑)。リッチと言うよりは、壁がない分、ひどく簡素に見えます。でも、風を体感できて、気分爽快。


ザ・リッチ号は人気らしく、往復で切符を買う場合、片道分しか買えないそうです。私たちは往路をザ・リッチ号にしました。
天井もスケルトン仕様。五月の緑が気持ちいいです。


列車は9時07分にトロッコ嵯峨駅を出発、ゆっくりとしたスピードで走り、20分余りで終点のトロッコ亀岡駅に着きます。
全長7.3kmと短いですが、保津峡に沿って走る列車からの景色はなかなかの見応え。


ただ、私たちはこの半年ほど前に、土讃線からの吉野川の景色を見てしまっているので、それと比べてしまうと感動がやや薄に…。祖谷川もそうでしたが、吉野川のあの美しさは格別です。
途中の駅は山の中。乗降車する人はほとんどいません。


ホタルがたくさんいそうですね。あと星空もきれいそう。
沿線は桜や紅葉が植樹され、四季折々に楽しめるようになっています。


観光鉄道としての付加価値をつけるため、一生懸命努力されたんでしょうね。
時折、保津川を下る屋形船やラフティングボートとすれ違います。


行きはトロッコ、帰りは船で保津川下りで戻ってくるというのが理想的なコースのようですが、保津川下りはアホらしいほど高いので止めました。
渓谷が終わり、開けた平野に出ると、間もなく終点のトロッコ亀岡駅。
トロッコ亀岡駅に到着。


そのままこの列車で引き返しますが、帰りは車両が違うので移動します。
少し散策したかったので、復路は終点よりひとつ手前の「トロッコ嵐山駅」で下車。


トロッコ嵐山駅を降りてから龍安寺までのルートマップ。参考までに。黄色は徒歩、オレンジはバスに乗った区間です。

散策したいというのは、この竹林の道。天龍寺の北側にあります。


京都らしい素敵な道です。
真っ直ぐ天に向かって伸びる竹を見ていると、清清しい気持ちになりますね。
根元の方を見れば、竹の子も。


うまそうだな(笑)。
嵐電の嵐山駅付近にやってくると、お店も多いし、観光客と修学旅行生たちでごった返していました。

そして、こういう場所に来ると、必ず買ってしまうのが…アイスクリーム…。

「京豆庵(きょうずあん)」というスイーツのお店を発見。そう言えば、この逆さにしても落ちない(くらい濃厚)とかいうソフトクリーム、テレビで見たことありますね。
一人一本ずつ買ってみましたよ。

左のは古都芋本舗のもの(ほうじ茶&抹茶)。右のが京豆庵のもの(豆腐&黒ごまきなこ)。

やはり京豆庵のがとても濃厚で美味しかったですね。お豆腐の味が濃厚で。古都芋本舗のはほうじ茶味がいい感じでした。

天気が良くて、気温も高めだったので、すぐに溶けてきて大変でした。
渡月橋までやって来ました。ここに来るとどうしても『るろうに剣心』を思い出してしまいます。


以前、桜の季節に来たことがありますが、桂川沿いの桜がとてもきれいでした。秋の紅葉、冬の雪景色…それぞれ楽しめそうですね。
さて、時刻は11時。まだお昼には少し早いんですが、ここらで昼食にしておきます。


嵐電の嵐山駅付近にある、こちらの「嵯峨とうふ 稲」というお店に入ります。
11時の開店直後に入店したんですが、あっという間に席が埋まってしまいました。


週末の嵐山は侮れないですね。
「京のおばんざい そうめん御膳」というのを注文。

ねぎ、油揚げ、大根、ごぼう、湯葉などのおかずをつゆに入れてそうめんと一緒に頂きます。美味しいし、栄養バランスもよさそうです。

少々暑かったので冷たいそうめんがありがたい。自分で擦る金ごまの薬味も風味が良くて◎。
セットで付いてきた胡麻とうふ(↑の写真上部中央)には、こんな説明書が。

「約千二百年前に弘法大師空海が精進料理として考案された。胡麻と葛で練り上げた料理です。最近の研究でも老化防止と若返りに効果があるとされています。(是非、残さずお召し上がり下さい。)」

空海が考案した? 本当ですかね? 真偽はよくわかりませんが、ミラツアで空海絡みの話に出会うと何か嬉しい(笑)。
嵐電・嵐山駅の前の通りから渡月橋の方を向いて。

嵐山は本当にものすごい人出でした。

お土産やさんもたくさんありますが、特にお店めぐりもせず、私たちは嵐山を後にします。
渡月橋の前から、京都府道112号を真っ直ぐ西に向かって歩いていく途中、大きな鳥居が。


「車折(くるまざき)神社」と書いてあります。聞いたことあるなと思ったら、境内に芸能神社があることで有名な神社ですね。こんなところにあったとは、知りませんでした。
渡月橋前から歩くこと20分余り。日帰り温泉施設「天山の湯」に到着。京都ってあんまり温泉のイメージがないですが、あるところにはあるんですね。夜行バスで疲れた体にはちょうどいいです。

泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉。内陸地では珍しいようですね。舐めたらかなりしょっぱかったです。中には色んな種類のお風呂がありました。青空を仰ぎながらの寝湯はリラックスできて最高。
リフレッシュしたところで、次の目的地・龍安寺に向かいます。

市バスを乗り継いで行く事もできるんですが、遠回りになるし、均一区間外なので乗り放題カードは使えないしということで、「山越中町」バス停まで歩くことに。

地図上で調べた最短距離を歩いていくと、住宅街の中に畑を発見。よくこんなところに畑が残っていましたね。植わっているのは、たぶん、きゅうり?
畑の横を歩いたり、民家の花々に癒されたりしながら、歩くこと20分余り。
天山の湯で少しのんびりし過ぎたので、予定より1本遅れましたが、山越中町バス停から59系統三条京阪行きに乗車。
14時50分頃、龍安寺に着きました。

私は以前来たことがありますが、今回は相方の希望で。
石庭への入り口に当たる、庫裏。


この時期、京都のお寺はどこも緑が鮮やかでいいですね。桜や紅葉の季節もいいですが、実はこの緑が本当は一番美しいんじゃないかという気もします。
石庭はあまりにも有名なので、人が多いです。私が以前来た時はもっと多かったような気が…。
石庭に配されている石は全部で十五個。しかし、この十五個の石をすべて同時に見ることはできないのだとか。それは、謙虚さを表しているとも、人の視野に完璧なものはないという真理を表しているとも言われているそうです。

でも、本当は、すべての石を見ることができる位置があすそうですよ。興味がある方は、訪れた際に探してみて下さい。
境内には大きな池もあって、周囲を散策することができます。


石の上でクサガメちゃんたちが甲羅干しをしていました。登るのが大変そうな石ですが、どうやって登ったんだろう…。


龍安寺の後は、北野天満宮に寄ってから、木屋町通りへ。一応地図を載せてみました。木屋町通りからようやくミラツアです。前置きが長くてすみません…。

北野天満宮に行くバスに乗るため、龍安寺から立命館大学前のバス停まで歩いたんですが、そこは標高200メートルほどの衣笠山の山裾になっていて、地層がむき出しになっています。


数千万年前の古い地層なんだそうです。
立命館大学前から50系統のバスに乗り、北野天満宮にやって来ました。


毎月25日は「天神さん」と呼ばれる縁日で賑わいます。この日はちょうど25日、確かに露店がたくさん並んでいます。
北野天満宮は、菅原道真を祀った神社の総本社。道真が大宰府へ左遷され没した後、都の災害は道真の祟りだとする噂が広まり、それを鎮めるため、947年にこの地に道真が祀られたのが始まりだそうです。


写真は楼門。
こちらは拝殿。


1607年に建てられたもので、すぐ後ろにある本殿と繋がっており、ともに国宝に指定されているそうです。
露店を覗いて歩くのは楽しいですね。


古いお猪口をひとつ買ってしまいました。
北野天満宮前から、10系統のバスに乗ります。
17時20分頃、京都市役所前に到着。


木屋町通りを散策する前に、「史蹟・一之船入」に来てみました。カフェが併設?されているようですが、船入を見るために中に入っていいようです。
ここは、高瀬川の起点(二条)に位置する昔の船着場で、高瀬川が輸送手段として利用されていた江戸時代の頃は、東西134m、南北16mもの広さがあったのだとか。


四条までの間に、かつては9箇所の船入があったそうですが、現存するのはこの「一之船入」のみです。


その高瀬川の東に隣接して南北に走っているのが木屋町通りです。北は二条から、南は七条まで続いているそうです。


江戸時代中期頃から料理屋や旅籠が店を構えるようになったこの通りは、幕末には勤皇志士が密会に利用したことで有名ですね。歩いていると、様々な記念碑に出会います。


そう言えば、ミラージュの幕末編にも名前が出てきたような気が(幕末編、実は続編の方はまだ読んでないのですが…)。


現在は、三条から四条付近を中心に、飲食店や風俗店などが連なる歓楽街となっています。


『無間浄土』では、「木屋町通りにあるクラブ」(66ページの記述より)が登場していますね。木屋町通りのどの辺りとは書かれていませんし、モデルとなる店があったのかどうかはわかりませんが、恐らくは、四条付近の賑やかな一帯にあるイメージだろうと推測します。
一之船入から、そんな木屋町通りを散策しながら南下します。

写真は、三条の少し手前辺り。通りの右側には高瀬川が流れ、左側には飲食店等が入居する雑居ビルが並んでいます。

割と若い人たちが多い印象です。ゆかりの兄・幸一が入り浸っていたというクラブもこんな雰囲気の中にあったのでしょう。
川沿いの景色っていいですね。高瀬川沿いには雰囲気のいいカフェなんかもあって、見ているだけでも楽しいです。


桜の木も多いので、春には花見がてらに歩くのもよさそうです。
今は、運河としての役割はなくなった高瀬川ですが、川沿いの飲食店はテラス席を設けていたりして、人々の憩いの場になっているようです。


鴨川の「床」もそうですけど、京都の人って水辺の情緒を大切にしているんですね。
四条の手前辺りまで来ました。

<大通りから少し入ったあたりには、そろそろアルコールの入った会社員や若者が多くなってきた。未成年のゆかりをしっかりガードしながら、綾子は例のクラブに入っていった>(29巻『無間浄土』68ページ)

綾子ねえさんとゆかりちゃんは、「四条木屋町」にある喫茶店で待ち合わせて、木屋町通りにあるクラブへ向かったわけですから、ここに書かれている「大通り」は「四条通り」のことだろうと思われます。と言うことは、やはりこのクラブは木屋町通りでも四条寄りにあったのではないかと、推測できます。
木屋町通りから四条通りに出たところ。写真は四条大橋の方向を向いて。


おっと、和装のご婦人方が…。京都らしい感じですね。
<四条木屋町にある洋館を思わせる雰囲気のいい喫茶店に綾子を案内したゆかりは、珈琲を頼むのもそこそこに事情を明かし始めた>(29巻『無間浄土』65ページ)

その喫茶店のモデルかと思われる「フランソア喫茶室」。他のファンの方で、ここをモデルと考えている方がいるかどうかわからないのですが、地名も書かれてあるし、イメージもある程度具体的だし、もしかしたらモデルとなった店が存在するんじゃないかと思い検索したところ、こちらの喫茶店に辿りついたという次第です。お、ここにも和装美人さんたちが。
作中には「四条木屋町」にあると書かれていますが、この喫茶店は西木屋町通り沿いにあります。住所的には「西木屋町通四条下る船頭町」だそうです。厳密な地名として当てはまるのかどうかわかりませんが、四条通りと木屋町通りが交わる一帯というニュアンスでは、この辺りも一応「四条木屋町」と言えるのかなあ…と思いますが、どうでしょう。

外観としては、書かれている通りの洋館風ですね。場所がある程度限定されて、しかも洋館風ということまで当てはまっているので、恐らく桑原先生はここを想定していたんじゃないかと。
フランソア喫茶室の創業は、昭和9年。戦争へと突入していく時代背景の中、反戦や前衛的な芸術を自由に議論する場としての役割をこの喫茶店が担っていたのだそうです。


ステンドグラスの窓、ドーム型の天井、赤いビロード張りの椅子、壁にはピカソや竹久夢二らの絵画。昔の文化人が好んだであろう雰囲気が今もそのままここにあります。
<どこかアカデミックな雰囲気の店内に尼僧と女子高生の取り合わせはよほど奇妙なのか、客がちらちらと盗み見ていたが、本人たちは気づかなかった>(29巻『無間浄土』66ページ)


上記のような歴史を考えれば、「どこかアカデミックな雰囲気」というのも頷けます。


綾子ねえさんとゆかりちゃんは、例えばこんな感じの席に座っていたんでしょうかね。
お店のオススメらしい、レアチーズケーキを頂きました。


チーズの風味がまろやかで、爽やかなレモンが効いている美味しいケーキでした。添えられているのはブルーベリーのソースです。


ちょうどいい休憩になりました。
喫茶室を出て、四条大橋にやってきました。時刻は18時45分。まだまだ明るいですね。最初少し押し気味だったスケジュールも、いつの間にか帳尻が合い、予定より少し早いくらいになりました。

写真は橋の上から北の方角を望んで。

四条大橋と言えば、やはり『みなぎわの反逆者』のシーンを思い出します。前回のみなぎわツアーでも来ましたけど。でも、『無間浄土』でも、綾子ねえさんここに来てるんですよね。もう一度、暗くなってから来ますので、そのシーンはまた後ほど。
で、晩御飯までのこの中途半端な時間、何をするかと言うと…、ちゃんと計画があるんです。


バスに乗るため、四条大橋を渡り、四条京阪前まで来ました。
四条京阪前から、203系統のバスに乗車。


写真は宵闇の八坂神社。四条大橋の辺りもそうですが、この八坂神社のT字路も、ここを通ると、ああ京都に来たなという実感がします。
銀閣寺道のバス停で降り、哲学の道へ。

前回のミラツアでも来ましたが、今回、この時間になってここに来たのは、ホタルが観たいからです。

5月末から6月中旬にかけて観られるそうなのですが…、まだ少し時期が早いかなと思いつつ、来てみました。哲学の道の北端から、疎水に沿って南下しつつ、ホタルを探します。写真は哲学の道北端付近。この辺はまだかなり灯りが多いです。
それにしても、こんな街中でホタルが生息しているということに驚かされます。すぐそばにたくさん人家がありますし、街灯や自販機が結構明るいんですけどね。

左の写真は、F3.5、ISO1600で、10秒間露出していますので、実際に見るよりもだいぶ明るく写っていますが、人工の灯りの影響があることがよくわかると思います。

毎年観られるそうですから、タイミングさえ合えば、ちゃんと観られるはずですが…、この時点で探し始めてから30分経過しているものの、まだそれらしき光は見当たらず。
途中、ホタルを観に来たと思われる人たち数組とすれ違いましたが、どなたも見つけてはいない様子…。

やはりまだ少し早かったかなと、やや諦めムードになった頃、微かに点滅する黄緑色の光を発見。小さく弱々しい光ですが、確かにホタルです。疎水沿いを歩いて約1時間、20時半のことでした。ああ本当に、この街中にいたんだ…とちょっと感動。

こちらの写真はピンボケ状態のもの。ひとつ下の写真はそこそこピントが合ったものです。
ただの点なので、随分味気ない写真なんですが…、これでも撮影はちょっと苦労します。あまりに暗いのでファインダーを覗いても何も見えないため、位置の特定とピント合わせがままなりません(暗いのでもちろんオートフォーカスは効きません)。素人の適当さで撮影しました。

結局、今回見つけられたのはこの一匹だけ。飛びもせず、ただじっと草の上に留まっていただけなので、寂しい写真しか撮れませんでしたが、それでも、ここでホタルが生息している証を写すことができただけで満足です。
ひとつ上の写真は、105mm、F5.6、ISO1600、露出時間10秒で撮影したもの。


左の写真は、18mm、F3.5、ISO1600、露出時間20秒で撮影したもの。白い矢印の先に写っている微かな光がホタルの光です。水辺に生えた草の上に留まっています。
今回、私たちがホタルを観たのは、大豊神社のすぐ北辺りです。写真は、疏水に架かる大豊橋から大豊神社の方を向いて。これだけすぐ近くに灯りがあるのに、ホタルは懸命に生きているんですね。恐らくは保護活動をされている方もいらっしゃるんだとは思いますが、これからもこの場所でホタルが生き続けられるよう願わずにはいられません。

皆さんもホタル鑑賞の際は、ホタルの繁殖活動の邪魔にならないよう、フラッシュ撮影はしない、懐中電灯や虫除けは使わないなどの配慮をしつつ、楽しんで下さいね。
白川通りに出てからバスに乗り、再び四条大橋へと戻って来ました。時刻は21時15分。先斗町の床に明かりが灯り、カップルは相変わらず等間隔。

<八坂神社から祇園を経て四条大橋のあたりまで来た尼姿の綾子は、そこがいつか高耶と一緒に訪れた場所だということを思い出し、人波の中でふと立ち止まった。二人でハンバーガーに噛み付いて鴨川を眺めてあの時、(景虎、あたしたち何話したっけ)>(29巻『無間浄土』63ページ)
『みなぎわ〜』の頃から五年弱の歳月が流れたわけですが、綾子ねえさんは織田による監禁状態を経て、明智光秀の保護の下、比叡山の尼へと姿をやつしているし、一方の高耶さんはと言うと、四国で大転換を成し、今空海になってしまっているし…。本当に、それぞれ遠いところへ来てしまったんだなあと、思わず切なくなります。これなら、慎太郎さんのことを想って泣いていた頃の方がまだ幸せだったんじゃないかと…。

写真は、四条大橋の上から東を向いて。昼夜を問わず、人通りが多いです。
こちらは四条大橋の上から、鴨川東岸の河原を望んで。「鴨川の河原」は、『無間浄土』に2度登場しています。

@綾子ねえさんが景虎とのことを思い出した後、ふらりと立ち寄り、ゆかりと出会う(64ページ)。A綾子ねえさんが河原へと逃げた幸一を追いかけて行き、危機に陥った時、兵頭が現れる(74ページ〜)。

両方とも四条大橋付近だろうと思われます。そして、@ではゆかりが、Aでは兵頭が現れたのが「土手」の方とのことですので、恐らくはこの写真のような鴨川東岸での出来事かと考えられます(反対側は河原の背後は飲食店の床になっていて土手がないため)。
さて、時刻は21時半少し前。だいぶ夜も更けてきましたが、夕飯がまだです。

前回の京都ミラツアでは、鴨川の川床の席で食べることができ、大満足だったので、今回も川床、できれば先斗町がいいなと思い探したところ…、なかなかいいお店がなく。いや、いいお店はあるんですが、高すぎ(笑)。ある程度庶民的な価格で、先斗町で、鴨川を眺めながら夕食…なんて、無理な相談なんでしょうか。

色々調べて、辛うじて一軒見つけたのが、「うしのほね本店」でした。人気があるのか、遅い時間なら空いていると言われ、21時半の予約です。もっとも私たちはホタル鑑賞の予定があったのでかえって好都合だったのですが。
紳士と和服淑女のカップルが妙にしっくりくる町です。
「うしのほね」は三条寄りのところにあります。


うっかりしていると、見逃してしまいそうなほど細い入り口。でも、そんなところもまた粋に思えてしまうのは、やはり先斗町だからでしょうか。
1階に川床のお席もあるのですが、予約できたのは2階の窓際のカウンター席。それでも充分です。

京都ミラツアの夜に、鴨川を眺めながら飲む日本酒は格別。ミラージュにおいても、鴨川はやはり特別な存在という感じがするんですよね。ああ綾子ねえさん…。

お酒は「月の桂 本醸造 流光」。今夜泊まる、伏見のお酒です。すっきりしたお酒。
窓からの眺めはこんな感じ。暗くて写真だとよくわかりませんが。1階の床のお席が見下ろせます。会社の団体さんのようでした。いいなあ京都の会社は。


その向こうに闇の中を流れる鴨川が。
奥は茄子の揚げだし、手前のは穴子の白焼き。

どちらもとっても美味しかったのですが、特に気に入ったのはこの穴子です。

私、今まで、穴子ってあんまり好きじゃなかったんですよ。でも、それはきっと、あの甘いタレがかかった穴子しか食べたことがなかったからなんですね。この白焼き、無茶苦茶うまかったです。シンプルな白焼きだと、穴子自体の味がよくわかって、本当に美味しい。この穴子がいい穴子だったから余計なんでしょうけど。臭みはなくて、脂が乗ってて、でも上品で…。なんでもっとこういう食べ方をしないのだろうと不思議に思ってしまうくらい。多少時間が経っても美味しく食べるためには、ああいう味付けが必要だったんでしょうかね。穴子のイメージが覆りました。
こちらは小鮎の天ぷら。奥に映っているのは鰆の焼き物。

小鮎って稚鮎のことかと思いましたが、どうやら違うようで。「コアユ」という普通の鮎とは少し違う種類の鮎らしいですよ。と言うのも、中に卵が入っているんです。柔らかくて美味。揚げ加減も上手です。

鰆も脂が乗ってて最高。

他にも何品か頼みましたが、ハズレがひとつもありませんでした。
お店を出たのは23時過ぎ。


河原町三条のバス停に向かう途中、偶然、池田屋跡の前を通りかかりました。今は、居酒屋・はなの舞になっているんですね。新撰組の隊士の名前が付いたカクテルとかあるらしい。2軒目なら、ちょっと入ってみたい(笑)。今回はすでに時間が遅いのでパス。
宿泊ホテルがある伏見へは、バスも通っていますが、時間が遅いためすでになく…。


京都駅から奈良線に乗ります。時刻は23時半過ぎ。終電のひとつ前の電車でした。
稲荷駅に到着。


京都駅から2駅6分の距離ですが、田舎駅の風情が。暗いのでよくわかりませんが、駅舎は伏見稲荷大社の朱色の鳥居を意識したデザインになっています。
琵琶湖疏水沿いの道をホテルの方へ。


満月のせいもあってか、何だか妙に雰囲気のある道でした。


疏水は意外に流れが速く、水量も多くて、ちょっと不気味。
この日泊まった「アーバンホテル京都」さん。最初に書いた通り、宿泊券が当選したので、今回は無料で宿泊させて頂きました。


途中でコンビニに寄って、チェックインしたのはちょうど午前0時頃。
セミダブルのお部屋。

今まで泊まったどのビジネスホテルより狭い…気もしますが、寝るだけならば充分です。

京都駅からは少し離れていますが、その分京都駅近辺のホテルより安いでしょうし、伏見も観光したいという方にはいいかもしれませんね。
コンビにで買った月桂冠のアルミ缶日本酒。こんなの、見たことありませんでした。月桂冠の商品なので、伏見だから特別?と思ったのですが、どうもそうではないらしく。この「粋ボトル」シリーズはファミマ限定のものらしいです。これはなかなかいい。新幹線なんかでワンカップ呑んでたらおやじくさいけど、これなら日本酒でもスタイリッシュな感じだし、ある程度の保冷性もあるし、しかもちゃんと蓋ができる。こういうの、もっと色んなところで置いて欲しいな。

しかし、夜行バスで早朝に京都に着いてから日付を跨ぐまで…なんて長い一日だったんだろう。二日目(神護寺、東寺、京都駅大階段等)は、後編にて。

2014.04.14 up







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