松本&妻女山、信州うららか春旅

〜仰木高耶を育んだ街を訪ねて

前編




旅行日:2012年4月28日〜29日

行程:(下線はミラツアスポット)

4月28日:
千葉駅→(あずさ)→松本駅→(徒歩)→マクドナルド松本店→(徒歩)→「松本インター手前のガソリンスタンド」&「向かいのファミレス」→(徒歩)→「駅前のショッピングセンター」→(徒歩)→松本駅前ターミナル→(徒歩)→伊勢町通り→(徒歩)→パルコの通り→(徒歩)→「大通りの楽器店」→(徒歩)→駅前大通り→(徒歩)→信越放送&NHK→(徒歩)→中町通り→(徒歩)→蕎麦倶楽部 佐々木→(徒歩)→中町通り→(徒歩)→本町通り〜千歳橋→(徒歩)→女鳥羽川沿いの道→(徒歩)→中の橋→(徒歩)→四柱神社→(徒歩)→松本ホテル花月→(徒歩)→テレビ信州→(徒歩)→松本城
→(徒歩)→深志高校→(徒歩)→丸ノ内中学校→(徒歩)→義民塚→(徒歩)→城山公園→(徒歩)→ホテル飯田屋→(徒歩)→ホテルブエナビスタ→(徒歩)→卯屋→(徒歩)→MAIN BAR COAT→(徒歩)→ホテル飯田屋

4月29日:松本駅→(JR篠ノ井線)→篠ノ井駅→(徒歩)→妻女山展望台→(徒歩)→篠ノ井駅→(JR篠ノ井線)→松本駅→(バス)→浅間温泉→(バス)→松本駅→(あずさ)→新宿駅→帰宅


※グレー文字は後編にて

同行者:パートナー




今年もやってきましたゴールデンウィーク。新緑の祖谷なんてどう?ってことで、宿とか交通手段とか色々調べていたんですが、予約でいっぱいだったり、辛うじて空いていてもめっちゃ高かったりで、断念。…なんかいっつもこのパターンだな。

で、もっと手軽に行けそうな場所の中から相方が選んだのが松本でした。ま、またしても東日本を脱すること叶わず…。

とは言え、松本もミラツアスポット満載で楽しめそうです。

写真は特急あずさ。朝6時38分に、なんと千葉駅発です。千葉から出てたんですねえ、あずさ。
仙台の時と同様、JTBで鉄道+ホテル素泊まりプランを申し込みました。1名13800円という、GW期間中にあるまじき?激安価格。

例によって野菜ジュースで気合いを入れます。朝食は…松本のアソコでアレを食べたいので我慢です。

千葉駅を出た時点では車内はガラ空き。ゴ、ゴールデンウィーク中に大丈夫か!?と心配になりましたが、新宿からはそこそこ人が乗ってきました。

「GW中は松本城は2時間待ち」という情報をキャッチしていたので、もしやこの人たちも皆松本城に!?と勝手に一人で緊迫しましたが、ほとんどの人は松本の手前で降りていきました。

そう、松本城はすごく混雑するらしいので、最悪天守閣は諦めるしかないだろうと覚悟しつつ松本へ。
10時23分、松本駅に到着。

車窓からも残雪の北アルプスが見えていましたが、降り立って改めて感激。『CALL 捨てられた猫のように2」では、あずさから降りた高耶さんが、にゃんこに北アルプスの山々を見せてやるシーンがありました。

この写真では上手く撮れませんでしたが、ホームから残雪を被った秀麗な山並みがちゃんと見えます。
松本駅のお城口を出たところ。

ロータリーの向こう、写真中央のビルの一階に、マクドナルド松本店があります。
松本ミラツアの一発目は、言わずと知れたこのミラジェンヌの聖地からです。

ここは高耶さんが幾度となく訪れた場所です。実際に作中に出てきたのは…たぶん、以下の4回。

@1巻最初の方で高耶と譲がやって来る。A10巻『わだつみの楊貴妃・前編』で高耶と譲がやって来る。B20巻『十字架を抱いて眠れ』の第一章で、美弥と友人が待ち合わせる。C同じく20巻の第一章で、高耶と美弥が買い物帰りに店の前を通り、高耶は思い出深い店の二階席を見上げる。
高耶さんがよく座っていた二階の窓際席。

当時からは、店内の様子もだいぶ変わっているだろうとは思いますが…。
高耶さんは中学時代、よく年上の仲間とここで閉店までたむろっていたのだといいます。

<その間、高耶は窓の外の風景をながめていたものだった。あの窓から見えた松本駅は……。あの頃の彼には、たったひとつの、外への出口のように思われた>(20巻『十字架を抱いて眠れ』29ページ)

生まれ育った街の駅に対しては、誰しも特別な想いを抱いているものなのかもしれませんね。
注文したのは、もちろんフィレオフィッシュとポテトとコーラ。ポテトはちゃんとLで。
駅前のビルの谷間からのぞく北アルプス。

こんなところから雪山がチラ見できるなんて、松本は本当に山に抱かれた街なんですね。

さて、無事松本駅前のマクドナルドを攻略し、お腹も満たされたところで、再び駅へと戻ります。
松本駅の改札口。

20巻『十字架を抱いて眠れ』で、美弥は友人のまどかとショッピングを楽しんだ後、ふらりと駅に立ち寄り、ここで「幻の」高耶さんと再会したのでした。

この20巻の第一章は、ミラージュの中で本当に泣けるシーンのひとつじゃないかと思います。高耶さんみたいなお兄さんがいたら、誰でもあんな気持ちになっちゃいますよね。切ない。


次は一旦、駅の逆側へ降りて、番外編『ふたり牡丹』で高耶さんがアルバイトをしていた「松本インター手前のガソリンスタンド」に行って見たいと思います。松本インター手前にはいくつもガソリンスタンドがあるのですが…、@向かいにファミレスがある、A駅に行くにはスタンドを出て右折する(=158号の南側にある)、B最もインターに近い…の3点から「ENEOS」に狙いを定めてみました。他のミラツアサイトさんを拝見するに、当時はENEOSじゃなくて違うガソリンスタンドだったようですね。

美しい北アルプスの山々がよく見えるようにという粋な計らいからか、松本駅の西口は一面ガラス張りの窓になっています。
松本駅の西口。

通称「アルプス口」と言うようです。さっきのマックがある東口は「お城口」(松本城があるから)。いかにも松本らしい、素敵なネーミングですね。
ここに住んでいる人たちにとっては何気ない風景なのかも知れませんが、旅人である私にとって、この山々は結構な存在感です。

この景色に慣れてしまってから他の、山の無い土地に行ったら、いつも何か物足りないような気分になるんじゃないかなあと思ったり。…高耶さんはどうだったんでしょうね。
158号を西に歩いて行くと、やがて奈良井川と交差します。これは南側(上流)。

奈良井川の堤防沿いの道は、1巻で買い物帰りの譲と護衛の直江が一緒に歩いた道です。直江は、一緒にいると不思議と心安らぐ譲に、高耶のそばにあるべきなのは自分ではなく、この少年だったのだろうと思い、「そばにいてあげてください」と告げていました。さぞかし複雑な心境だったことでしょう。
こちらは北側(下流)。
更にひたすら158号を西に歩きます。

春の花が咲き、清々しいお天気ですが、この日の松本の予想最高気温は27℃。最低気温は確か…10℃未満だったかな。昼間は東京より暑く、朝晩は東京より冷え込むという激しい寒暖の差。
しばらく歩いてやっと目的のENEOSに着きました。

店も変わっているようなので、あまり意味が無いかも知れませんが、一応、恐らくはこの場所で高耶さんがバイトしていたんだなあと。
しかし高耶さん、ガソリンスタンドでアルバイトなんて似合いすぎです。私も高耶さんに「レギュラー満タンでーす!」とか叫んで欲しい…って、免許持ってなかった(笑)。
ENEOSの向かいにあるレストラン。作中ではファミレスとなっていますが、今はしゃぶしゃぶと焼肉の食べ放題の店になっていました。

高耶さんのバイトが終わるまで、直江は向かいのファミレスで同級生の矢崎から高耶さんの学校生活についてさんざん聞き出していたとのことですが、一体何を聞いていたんですかね。美術の成績が2だった、とかでしょうか。案外、高耶さんにちょっかいを出す女子がいないかどうかとか、しつこく尋問していたのかも知れません(笑)。
高耶さんがバイト中、駅の方に行きたいという女性のお客さんに、「だったら右折後、右車線で行ってください。渚んとこの…えーと、19号と合流する交差点、直進は右折レーンと一緒になるんスよ。あそこ初めての人は間違い易いんで」と教えてあげていた、その交差点がここ(歩道橋の先)。「渚一丁目」という交差点です。

今は三車線で、単純に右折は右車線、直進は中央、左折は左車線となっているようでした。
松本駅のお城口に戻ってきました。ガソリンスタンドまで往復約1時間。随分歩いたな…。

また戻って来るのに、最初にわざわざこちらへ降りてマックに行ったのは、先にガソリンスタンドに行ってからだとちょうどお昼頃になって混むだろうと読んだからです。

と言うわけで、この時点でちょうど12時。でもお昼ごはんはもう少し先です。


こちらは松本のミラツアスポット広域図。午後は線路の東側のスポットをダダダダーっと怒涛の如く巡ります。松本城より南側のミラツアスポットは↓の地図をご覧下さい。



松本駅前から松本城手前までのミラツアスポットマップです。
はミラツアスポット(推定含む)、黄色い線は今回通った道。表示してある通りはミラージュに登場した通りです。「パルコの通り」に「?」が付いているのは、作中に何度か登場する「パルコの通り」というのが、正確にはどの通りを指すのか不明だったためです。パルコは北は伊勢町通り、南は別のもう少し細い道に接していますが、「伊勢町通り」のことを言いたいのであれば、普通に「伊勢町通り」と書くでしょうし、恐らくはパルコの南側の方の道を言っているのだろうと推測します。
松本は高耶さんが生まれ育った街ということで、主な舞台となった1巻&2巻のほか、シリーズ全編+番外編を通じてちらほらと登場機会がありました。松本の街を巡りながら、それらのシーンを振り返ってみたいと思います。話が行ったり来たりでこんがらがりそうですが、お付き合い頂けたら幸いです。

では、駅に近いところから攻めていきます。先ずは「駅前のショッピングセンター」からです。

1巻では、高坂がこの屋上から松本駅前ターミナルでのラストバトルを見下ろしていました。

また、20巻『十字架を抱いて眠れ』では、美弥ちゃんと高耶さんが地下の食品売り場で買い物をしていました。レジに並んでから「苺を取ってきて」と言われ、慌てる高耶さんが可愛いですね。日常の平和でほのぼのした一幕だっただけに、この話の結末との落差が悲しすぎます。

で、このショッピングセンターですが、以前は「エスパ」というお店だったらしいのですが、2011年12月から「アリオ松本」に変わってしまったようです。エスパの時に見たかったなあ。
地下の売り場です。店が変わった時点で改装しているのであまり意味ないでしょうが、一応。

食品売り場はこの奥の方で、手前は信州の特産品などを売っています。二日目、帰る前にここでおみやげを買いました。
こちらは駅前大通り。1巻の終盤で、この通りは骸骨武者たちの暴動にパニックと化していました。

また、『凍てついた翼』で、高耶さんが譲に連れて来られた、ラーメンのつゆの中に日本そばが入っているという奇妙なラーメン屋があったのもこの駅前通りです。10巻『わだつみの楊貴妃・前編』で、この店はつぶれたことが判明し、高耶さんは街の変化に気づくとともに、そんな変化に気づく自分に気づいたのでした。街の変化に気づくのは、高耶さんがこの街を生活拠点としなくなったからなのでしょう。この10巻は留年が決まったこともあり、高耶さんの生活の軸が闇戦国の方へと傾いていった分岐点のような感じがします。
駅前大通りとマックの前を通り過ぎて北上し、伊勢町通りまでやってきました。

写真は歩道の脇を流れる水路。松本は、街の至るところにこうした水路や井戸が見受けられました。さすが水の街ですね。
伊勢町通りの「伊勢町」交差点付近。

伊勢町通りは、高耶さんと譲の行きつけのゲームセンターがあった場所です。10巻で留年が決まった後、高耶さんは譲を誘ってそのゲームセンターにやってきます。憎まれ口を叩きながらゲームに集中する高耶さんでしたが、そんな時にもふと譲の横顔をちらりと見て微笑するあたり、もう昔のようにゲームにばかり夢中になっていられる少年ではなくなったのだなと感じさせられ、切なくなるワンシーンです。

ゲームセンターらしき店は見当たりませんでした。昔はあったのでしょうか。
伊勢町通り側から見た松本パルコ。

高耶さんも買い物に来たことでしょう。
伊勢町通りの突き当たり、本町通りと交わるところに、「牛つなぎ石」があります。

これは例の、「敵に塩を送る」の故事で、上杉謙信が武田軍に送った塩を乗せた牛を繋いだ石なのだとか。
本町通りを少し南下して、パルコの通り(?)へやって来ました。

写真中央に見えるグレーっぽい建物がパルコです。
パルコの通り(?)に面したなまこ壁の建物。

松本ではなまこ壁が多く見られました。そう言えば、記念すべき1巻の高耶さん初登場シーンにはなまこ壁が出ていましたね。

<土蔵造りの白いなまこ壁にもたれて、彼はこちらを眺めていた。そして、涼しい薄笑いを浮かべて、譲にむかって一言、「やるじゃん」>(1巻『炎の蜃気楼』16ページ)

具体的な場所がどこかは特定できません。
パルコ脇から駅の方角を向いて(左側手前に写っているビルがパルコ)。

このパルコの通り(?)がミラージュに出てくるのは、多分…以下の2回。

@3巻『硝子の子守歌』で、譲が沙織に声をかけられる(この後二人は大通りの楽器屋へ向かう)。A20巻『十字架を抱いて眠れ』で、美弥と高耶が歩いていると、居酒屋の前にたむろしている学生グループの中に美弥の知り合いがいて、高耶が姿をくらます。

この先、駅の方に向けて確かに居酒屋が多かったです。夜のパルコの通り(?)の様子はまた後ほど。
3巻の譲と沙織にならって、「大通り(多分駅前大通りのこと)の楽器店」に来てみました。

「ミュージックプラザオグチ」さんです。大通りの楽器店と言うと恐らくここかと。パルコからも近いですし。

<横断歩道を渡りきった二人である。楽器店に入っていこうとしたところを、突然車のクラクションに呼び止められた。「え?」振り向くと、ガングレーメタリックのレパードが停まっていて、窓から見慣れた顔が手を振っている。譲が声をあげた。「千秋!」>(3巻『硝子の子守歌』199ページ)

この直後、譲は千秋に拉致られて、仙台に連行されました。千秋のレパードの初登場シーンですね(物語の時系列的には『ふたり牡丹』の方が先ですが)。
次は、駅前大通りを西へ向かってずっと歩いて行きます。

途中、こんな塾の看板を目にしました。深志高校って、やっぱり進学校なんですねえ。高耶さん、本当は頭良かったのかな。
10分くらい歩いて信越放送の前までやって来ました。

1巻では、譲に憑依した信玄が「街の中心近くの放送局」のそばに立ち、「危ない」と注意した警察官を念で吹き飛ばして、破壊活動をするシーンがありました(191〜192ページ)。屋上の電波塔も火を噴き倒壊したというこの放送局がどの放送局か、いまいち特定できませんが、一応抑えておきます。
こちらは↑の信越放送の東隣にあるNHK松本支局。

こっちの電波塔の方が大きいので破壊し甲斐?はあるかな?
放送局を二つ見た後、大通りを少し戻って北上し、中町通りへ向かいます。

写真はその途中で見かけた水路。歩いていると、時折こんな綺麗な水の流れを見かけます。
中町通り。

この中町通りは、土蔵造りやなまこ壁といった建築様式が多く見られ、城下町の風情を色濃く残している通りです。

1巻で、由比子と沙織を追って松本城に行く途中、高耶さんはこの辺りで、向こう側の路地に骸骨武者が歩いているのを目撃します。
さて、そろそろ午後1時近くになってきましたので、散策は一旦中断し、昼食を食べるお店に向かうことにします。

松本でお昼と言えば、もちろんお蕎麦。目指すお店は、中町通りから北に折れ、中の橋を渡って道なりに北上したところにあります。

写真は中町通りから中の橋に続く道。
蕎麦倶楽部佐々木。

店頭に置かれた黒板には「本日のそばの実 麻績日向産」、「そば粉九割三分で打ちました」と書かれています。
店内はレコードがかかっているという一風変わったお蕎麦屋さん。

私たちが入った時はたまたま空席がありましたが、すぐに満席となり、待つお客さんも数人いました。知らなければ通ることもない小さな路地にある店ですが、食べログでも高評価なので、わざわざ来る人も多いのでしょう。
とろろそば1100円。

右上のお猪口に入ったのがとろろです。

先ずは出汁にはつけず、右下の塩でお蕎麦を味わいます。細めのお蕎麦で香りがいい。出汁もいいお味で満足です。

松本のお蕎麦屋さんは、日本酒やおつまみメニューが充実しているところが多いようなので、次の機会があれば、夜にお蕎麦屋さんで一杯やるのもいいかもしれません。
お蕎麦を頂いた後、中町通りまで一旦戻り、本町通りと交わるところまでやってきました。

写真は本町通り。奥の黒いビルの手前辺りが女鳥羽川に架かる千歳橋です。
千歳橋。

1巻で、力が使えず、直江に嫌味を言われて憤慨した高耶さんは、沙織と共にこの千歳橋の前までやってきました。

<松本城に続く道の千歳橋を渡ったところに、骸骨武者の集団がいる。あの千歳橋はかつて城の大手門があったところ。あの武者たちは、城に侵入するものを防ぐ門番のつもりなのか。だとすれば、おそらく信玄はこの先にいる!>(1巻『炎の蜃気楼』194ページ)

高耶さんと沙織は、やけくそ気味に鉄パイプで骸骨武者たちと闘うのでした。しかし高耶さん、鉄パイプ似合うなあ(笑)。
千歳橋の手前で東に折れ、女鳥羽川沿いの道を進みます。

この道は、1巻でマックを出た高耶さんと譲が歩いた道です。原因不明の記憶喪失に悩む譲に、高耶さんは戦国時代の怨霊にでも取り憑かれているんじゃないかと軽い調子で言いますが、まさか自分自身が元・戦国時代の怨霊だとは、この時は夢にも思わなかったことでしょう。

また20巻では、美弥ちゃんと友人のまどかが、この女鳥羽川沿いにある美弥ちゃんお気に入りの珈琲店に寄ったと書かれていますが…、それらしきお店を探すの忘れました…。
女鳥羽川を泳ぐ鴨。

水が綺麗なのがよくわかります。


千歳橋から東に歩いて二本目の橋がこの「中の橋」です。由比子が佇んでいた橋ですね(作中に橋の名称は書かれていませんが、この辺りで朱塗りの橋はここだけのようですので、この橋で間違いないと思います)。ここで高耶さんと譲は由比子と出会い、闇戦国に巻き込まれていきます。
橋の上でピースをしている馬鹿は私です。

こちらは女鳥羽川のすぐ北側に東西にのびる縄手通り。

みやげ物屋や飲食店が立ち並んでいます。
その縄手通りの一角にあるたい焼き屋さんでたい焼きを購入して、近くの四柱神社(よはしらじんじゃ)へと向かいます。

なぜたい焼きかと言うと、千秋が四柱神社で食べていたから。もしかしたら、桑原先生もこの辺りでたい焼きを買って四柱神社で食べたことがあったのかも知れませんね。
縄手通りの北側にある四柱神社。

松本城で事故の聞き込みをした高耶さん&直江と千秋がここで落ち合ったのは、番外編『ふたり牡丹』でのこと。三人はこの日の深夜、松本城に調伏に赴くことを決めます。

さっき買ったたい焼きは、実はたい焼きアイスです。中にバニラアイスとあんこが入ってます。暑かったので。
高耶さんが座っていた社殿の階段。

<社殿の階段に座り込んで頬杖をついていた高耶が、直江を振り仰ぎ、「おまえは無理すんなよ。怪我してるし。オレと千秋で何とかする」>(番外編『ふたり牡丹』52ページ)

加助騒動の時に負傷した直江を気遣っているんですね。この頃の高耶さんは直江に優しかったんだよなあ…。
四柱神社は元気な鳩がいっぱいいました。

最近は「鳩に餌をやらないで下さい」という神社も多いようですが、ここではちゃんと鳩豆も売っていました。

糞害などの問題もあるんでしょうけれども、やっぱり鳩のいない神社って味気ないなと思います。
20巻では、美弥ちゃんも友人のまどかと一緒に四柱神社を訪れていました。お参りした後、ベンチに座って、美弥ちゃんは連絡のない兄への心配と不安をまどかに吐露したのでした。

境内にはベンチらしいベンチは見当たりませんでした。辛うじて座れそうだったのがこれ…。一応抑えてはみたものの、これはベンチと言うより、鉢植え台でしょうか。
四柱神社を出て、本町通りを北上し、「松本城南」の交差点を東に曲がって真っ直ぐ行くと、「松本ホテル花月」に着きます。

33巻『耀変黙示録W―神武の章―』で美弥ちゃんの行方を追っていた一蔵たちが来ていたのはこのホテルではないかと思います(作中にホテル名は出てこないので定かではありません)。

<一蔵は今、松本城近くの老舗ホテルにいる。なまこ壁が特徴の洋館風建物のロビーで、一蔵はかかってきた携帯電話に応対していた>(33巻『耀変黙示録W―神武の章―』195ページ)

ただ、このホテル、なまこ壁ではないんですよね。
なまこ壁云々の描写は一致しませんが、松本城近くの老舗ホテルであることと、ロビーに民芸調の椅子とテレビがあることは一致しています。

一蔵が直江からの電話を切り、国領住職と高耶の母・佐和子に歯切れ悪く状況を説明していると、突然ブラウン管に嶺次郎の顔が映り、一蔵は驚いて手前の民芸調椅子をひっくり返してテレビにすがりついたのでした。

作中ではブラウン管テレビだったのが、今は液晶テレビになっている辺り、時代の流れを感じさせます。
さて、市街地のスポットはあとは松本城を残すのみと思いながら、松本城に向かう途中で、もうひとつ放送局を見つけました。テレビ信州です。

「街の中心近くの放送局」って…どこを街の中心とするのかよくわかりませんが、松本城に近いし、もしかしたら、こちらの放送局のことかもしれませんね。
細かいスポットばかり巡ってきましたが、やっとメジャースポットに辿り着きました。松本と言えば、やはり松本城です。

松本城は、国宝四城(松本城、犬山城、彦根城、姫路城)のひとつに数えられ、現存する五重天守としては日本最古のものなのだそうです。


松本城敷地内のマップです。作中に登場した場所を入れてみました。参考までに。

先ずは堀端から(写真は天守閣の南側から)。

松本城の堀端は度々登場していますね。ピックアップしてみると…@1巻で沙織と由比子を追ってやってきた高耶が由比子を見つける。A1巻で信玄と三条が投光機や電灯を割り、城を紫の炎で燃やす。B『ふたり牡丹』で夜の松本城に潜入する前に高耶と千秋が佇む。C10巻で高耶と譲がやってくる。D20巻で高耶と美弥が帰宅途中に立ち寄る。

…と、こんなところでしょうか。中でも、10巻で高耶さんが譲に留年が決まったことを告げるシーンは印象的でした。この時の高耶さんはすっかり景虎的空気を醸し出していて、戻れない道に突き進んで行く悲壮感さえ漂わせていましたね。
こちらは黒門。

1巻で、沙織とともに松本城に攻め込んだ高耶さんは、ここで、直江電波(笑)をキャッチします。

<何かに呼ばれたような気がして、高耶が突然振り返った。(……直江……?)松本城の敷地内、内堀からの天守閣に続く『黒門』と呼ばれる一の門。そこで守りにつく武者たちを蹴散らし突破した、その時だった。(直江、なのか?)心が騒ぐ。高耶はわずかに動揺した>(1巻『炎の蜃気楼』205ページ)

覚醒していなくても、直江の窮地だけはちゃんと察するんですね。やっぱり愛の力?
「ただいま天守内が大変混雑しております」の立て札が。

いやいや想定内ですよ。覚悟してますよー。と思いつつ中に入ると、とりあえず天守閣の外には行列はない模様。2時間待ちとかなら、諦めるしかないと思っていたのですが、なんとか見学できそうです。
本丸御殿跡の砂利道。

ここは、1巻で、由比子に憑依した三条と高耶さんが対峙した場所です。三条は高耶さんの一喝で依坐から霊魂を吹き飛ばされ、信玄のいる駅前ターミナルに飛び去ります。

人っ子ひとりいないように見えますが、この道はここから先は立入禁止だからです。天守閣へは回り道をして行きます。
天守閣の外には行列はありませんでしたが、中に入ると、すぐに人の流れが滞り、行列のままゆっくり進む状態に。

しかし、この階段の急なことと言ったら。しかも、急なだけでなく、一段一段の幅が狭いので、非常に登りにくい(降りるのはもっと難儀)。途中で諦めて帰って行ったおじさんもいたようです。現存十二天守の中では、他に松江城に登ったことがありますが、あそこも階段はかなり急でした。昔の人って、足腰が丈夫だったんでしょうね。

『ふたり牡丹』では、観光客が階段から落ちて救急車が駆けつけるという事故が起こりましたが、こんなに急な階段で、将棋倒しで人が倒れたら怖いだろうなと思います。ま、皆さんゆっくり昇り降りしてるので、大丈夫でしょうけれども。
築城四百年余りの松本城。途中で解体復元工事はしているわけですが、こういう立派な梁などを見ると、時間の重みを感じてしまいます。

と言うか、こういう建築物に人が行列を成して登って、傷まないのか、少し心配になってしまいました。国宝なのに。
天守閣最上階。

行列のまま登って、最上階を行列のままぐるりと一周して、行列のまま降りる…という状態でした。でも、登れただけでもありがたい。

ここは『ふたり牡丹』で、無理やり人柱にされ、成仏したがっている女の子の霊を高耶さんと直江と千秋が力を合わせて調伏した場所…ですが、雰囲気に浸る余裕はありませんでした…。あ、あと、1巻で沙織が由比子に憑依した三条から暗示をかけられたのもここでした。
天守閣最上階からの眺め。

画面右端に見える橋は「埋(うずみ)の橋」。橋より少し左側の堀端に藤棚があります。
間近で見上げる天守閣。

『ふたり牡丹』では、化け提灯が雲霞のごとく石垣を一斉によじのぼり、火を噴きながら城に群がる一幕がありました。


順序から言えば、天守閣に行く前に二の丸跡を見ると良かったのですが、うっかり忘れたので、再び黒門から引き返して、二の丸跡に向かいます。
二の丸御殿跡。

<二の丸御殿跡にはたくさんの蒼白い化け提灯が集まっている。なかなかの壮観だ。何百という数の提灯が、広大な芝生の上に、ふわふわと浮いているのである>(『ふたり牡丹』47ページ)

明治の頃には、この二の丸跡に学校が建ち、本丸跡が校庭として使われたこともあったのだとか。ちょっと大げさに言えば、ヴェルサイユ宮殿の庭園に学校が建つようなもんでしょうか。違和感あるなあ。時代の変遷期ならではのことなのでしょう。


たぶん、ここが松本城を鑑賞するベストスポット。南西の堀端から。こう見ると、本当に美しい城ですね。こんなに立派な松本城ですが、明治初年の廃藩置県で松本藩がなくなると取り壊しを命じられ、明治5年には天守が競売にかけられたのだというから驚きです。235両(およそ400万円)で落札した人は天守閣を取り壊そうとしましたが、地元に住む弱冠二十八歳の啓蒙家・市川量造は「城がなくなれば松本は骨抜きになる」と市民に訴え、資金を募り、買い戻すことに成功したのだそうです。松本に住む人たちの城を愛する心が、この城を生かし続けてきたのですね。

埋の橋。

『ふたり牡丹』で、城北高校から提灯行列を追って来た高耶さんたちは、この橋を渡って天守閣の方に向かいました。

ところで、この松本城の堀の水は、川から引いたものではなく、湧水なのだそうです。ネットで調べてみると、本来、水質はいいらしいのですが、この時は藻が発生していて、水位も低かったです。大きな鯉の背中が水面に出てしまうほどで、なんだかかわいそうでした。
『ふたり牡丹』で、提灯行列が松本城に集まるのを見た翌日、高耶さんと直江は松本城で落ち合います。直江は藤棚の下のベンチから、高耶さんは藤棚の柱に寄りかかって、城の様子をうかがっていました。

高耶さんがよりかかった柱はどれでしょう…。
天守閣にいた女の子の霊を調伏した後、高耶さんたちが戻ってきたのも、この藤棚のもとでした。

高耶さんは堀端にしゃがみこみ、女の子がかつて鉄砲水で死んだ霊だったことや、城の人柱にされた顛末を語り、彼女を呪縛していた札にライターで火をつけ、精霊流しのように堀に投げたのでした。しんみりする一幕です。


続きは後編にて。
 






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