プチ・ミラージュツアー


「鷹の巣山近くの川原&沈下橋」の巻


●旅行日 2015年5月21〜23日
●『炎の蜃気楼』該当箇所 27巻『怨讐の門 黄壌編』132ページ〜、142ページ〜
●対象スポット 鷹の巣山近くの川原&沈下橋(長生沈下橋)
●同行者 相方、相方母

またしても、“家族旅行にさりげなくミラスポットを盛り込んでみました”シリーズで恐縮ですが、四万十川周辺の旅をご紹介します。

四万十は、この前年、2014年5月に江川崎から中村まで全行程約40kmのサイクリング(レポート番号22)をして以降、私も相方もすっかり魅了されたわけですが、今度は相方母を連れて星羅四万十に宿泊しようという話になり、今回の旅の計画が浮上した次第です。

母連れなのであまりハードな旅はできませんが、江川崎から下流は前年に既に行っているので、今度は是非上流方向を少し攻めてみようではないかということで、「道の駅とおわ」や「長生(ながおい)沈下橋」周辺へ立ち寄る計画を立てました。つうか、四万十と言えば私も黙っちゃいません、当然、ミラスポットをチェックするためなんですが(笑)。

初日は松山で一泊し、四万十入りは翌日から(当然のごとくジェットスターで四国入りしますので、四万十に向かうには松山経由は必須なのです。因みに今回の飛行機代は一人当たり往復で7,600円)。

写真は道後温泉本館。今回は、折角母連れなので、ちょっとリッチに個室休憩付きプランを利用してみました。湯上りに名物の坊ちゃんだんごも出て、なかなかの風情でした。
さて、翌朝、松山から宇和島を経て、予土線で四万十入りします。


写真は、宇和島駅にて。窪川行きの予土線です。窪川の文字を見るたび何だかときめいてしまう(窪川攻防戦あたりの仰木隊長男前すぎる…)のは、ミラージュファンのさがでしょうか。



十川から江川崎付近の四万十川流域です。今回は、27巻、鷹の巣奪還作戦直後のシーンに出てきた四万十川の川原(132ページ〜)と沈下橋(142ページ〜)へ行きたいと思っているのですが、、作中で具体的な地名は書かれていないんですよね。なので、推定でしかないのですが、それは恐らくは↑の地図にある「長生沈下橋」の辺りだろうと見当をつけて、そこを訪れることにしました。鷹の巣山に一番近い沈下橋がこの長生沈下橋になりますし、この沈下橋の周辺の川原は広く、一応キャンプ場になっているので、隊士たちが篝火を焚いたりテントを張ったりするのに適しているだろうと思われます。

長生沈下橋へ行くのは旅の三日目で、二日目は予土線の十川駅で下車し、「道の駅とおわ」へ行きます。この十川には、『終わりを知らない遊戯のように。』で高耶さんと直江が体育倉庫に身を潜めていたという中学校があるのですが…、十川駅から道の駅まで、今回は往復送迎車利用のため、残念ながら見に行くことはできません。また別の機会にチェックしたいと思います。あ、因みに、原作で「十川」に「とがわ」とルビが振ってありますが、正しくは「とおかわ」らしいです。

余談ですが、四万十川は、この更に上流に遡ると、大正、窪川といったミラージュスポットがありますね。大正キャンプは、高耶さんがミホに襲われた場所で、臼杵からヘリで飛んできた直江が道の駅の駐車場に強行着陸したりしていました。大正の道の駅もなかなか素敵なところのようですので、そのうち行ってみたいです。一方、窪川は仰木隊長の名演説で隊士たちが奮起し、激しい攻防戦を繰り広げた場所ですが、実はあまり具体的な地名は出てきていないんですよね。ほぼ唯一、出てくるのは「枝折山」という山の名前でしょうか。この窪川へは、2015年11月にミラツアとしてではなく、別の用事(移住関連)で行ったのですが、その枝折山も、どれがそうなのかいまいちよくわからず。窪川ってこんなところでした的な感じで、プチレポートにしてもいいのですが…、あまりにも内容が薄そうなのでどうかなと…。

江川崎駅を出てすぐの辺りの予土線の車窓から。橋の下は広見川。

この広見川のずっと先の高台の上に見える屋根が星羅四万十。

その星羅四万十の正面辺りで、広見川と四万十川が合流していて、これまで広見川沿いを走っていた予土線は、ここから四万十川沿いを走ることになります。
四万十川沿いをしばらく走ると、例の長生沈下橋が見えてきます。


長生沈下橋については、また翌日。
                 
十川駅に到着しました。

しかし、すごい風景ですよね。

絵でも見ているようです。

「道の駅とおわ」のすぐ隣から遊覧船が出ていて、その遊覧船を予約したのですが、利用者は駅まで送迎して下さるとのことでしたので、お願いしました。歩くとそこそこの距離があるんですよね。今回は相方母も一緒なので助かりました。
道の駅とおわ。

農産物や土産物を売っている他、カフェや食堂もあります。

この道の駅を運営している「株式会社四万十ドラマ」という会社は、四万十の名産品を使った様々な加工食品を企画・販売しているのですが、四万十に魅せられた若い人たちの力が入っているからか、他には無いような魅力的な商品が多いです。パッケージのデザインもとってもお洒落ですし。総じて値段は高めなんですけどね。それでも、ついつい買いたくなるような品物が多く、見ているだけでも楽しいですよ。

道の駅とおわHP → http://shimanto-towa.jp/

そして、オススメなのは、売っているものだけでなく、何より、この建物の向こう側に広がっている風景でしょう…↓



どうですか、この景色。ほんとにあるんですよ、こんな風景が、日本に。前回の四万十ツアーのレポートでも書いたと思いますが、こんな景色を目の前にしたら、戦意喪失すると思うんですよね。ミラージュでは、この辺りでも伊達と赤鯨衆が熾烈な勢力争いをしていたはずですが、こんな雄大で美しい自然の中にいたら、思わず土でも耕したくなって来るんじゃないかな…と。もういいや、畑耕して、夜はうまい酒呑もうぜ、みたいな。いや考えてみれば、基本的に高知県民って、そういうところありますよね。遊びが好きだし酒が好きだし。でも、一方でこの大自然のような包容力もある。包容力があるから、変革を恐れないところがある。創意工夫して切り拓いていこうとする気概のある人が多いように思えます。坂本龍馬とか、正にそんな人間だったのかもしれませんね。まあ、あの人を語るならば、四万十の風景より桂浜の方が合ってそうですけど。

道の駅の食堂で昼食を食べてから、遊覧船に乗船。


時折、山際を予土線の列車がゴトンゴトンと走り過ぎて行きます。
遊覧船の後は、道の駅のすぐ隣にある「ocha kuri cafe」へ。「お茶」と「栗」のカフェ、ってことですね。


あまり知られていないかもしれませんが、お茶と栗は四万十の名産品です。お茶は、「四万十レッド」なんていう紅茶もあります。何となく仰木隊長を彷彿とさせるような響きですよね。
蛇行する四万十川を眺めながら、四万十スイーツを食します。

産地の違うモンブラン三種の食べ比べセットを注文しました。四万十(奥の量が多いやつ)、丹波、あともうひとつを忘れてしまったのですが…、食べログを見ると恐らく岐阜・恵那のようですね。

丹波栗と言えば、言わずと知れたブランド栗でありますが、食べ比べてみると、四万十の栗が一番美味しいというのが、三人の共通の感想でした。もちろん、それぞれの良さというのはあると思うのですが、栗の味の濃厚さで言えば、四万十が勝っていました。そもそも自信がなければ、こういう食べ比べセットにはできないでしょうしね。
予土線で、江川崎まで戻ってきました。今回は、星羅四万十の送迎車を予約済み。

写真は、送迎車の車窓から、四万十川と広見川の合流地点を望んで。

左手の山の麓に江川崎の小さな街が見えます。右手の山にぽつんと建っているのが、ホテル星羅四万十。前回の四万十チャリツアーの時にも泊まっていますので、ホテルについては、そちらもご参考になさって下さい。
こちらは、夕食時に頂いた、なまずのお刺身。

前回食べた時に感動したので、今回は別注で予約していました(毎回コースに入っているかわからなかったので)。盛り付けもきれいですね。

前回のレポートでも書きましたけど、このなまずが美味なわけですよ。なまずどころか、川魚とも思えない、鯛に似た味で、食感はもっちりしています。
四万十の山々に夕闇が降りていくのを眺めながら、四万十の地酒を頂くのは、正に至福の時。


陶板焼きは、四万十・窪川の米豚だったかと。
夕食後、隣接する天文台の観測会(500円/1人)に参加し、その後、ホタルツアー(無料)に連れて行って頂きました。

広見川の細い支流を遡った山中だったと思いますが、かなりの数のホタルが飛んでいました。それでも、車を出して下さったホテルの方の話によると、年々数が減っているのだそうです。

他にも参加者がいましたし、そんなに長い時間いられませんでしたので、ろくな写真ではありませんが、一応ホタルの光を写すことができました(15秒露出、2枚合成)。
さて、お待たせしました。翌日になりまして、ようやくミラージュツアーです。

写真は、四万十の山々と星羅四万十。

一番後ろの山並みに、二つ飛び出た部分がありますが、その左の方が鷹の巣山かと思われます。

鷹の巣山については、四万十チャリツアー(レポート番号22)で色々書いていますので、そちらをご参照下さい。
ホテルから歩いて長生沈下橋を目指します。


写真は、江川崎の街中にて。


残念ながらこの日は曇ってしまいましたが、歩くにはこのくらいの天気の方が良かったかもしれません。
江川崎の街を過ぎ、四万十川沿いを北上します。


天気は悪くても、四万十はやはり美しい。


奥の山並みの一番高い部分が、鷹の巣山頂かと思われます(写真右の方)。
背後からゴトンゴトンと音がしたので振り向くと、新幹線の登場です。一両編成の。
そこそこの距離がありましたが、相方母がんばって歩いてます。


しんがりを行く私は、歩きながらずっと鷹の巣を目で追っていたのですが、途中で手前の山に遮られて見えなくなってしまいました。


こちらの写真ではまだ辛うじて見えています(右の方、一番高い部分)。
星羅四万十から、途中お弁当も買いつつゆっくり歩いて1時間半、長生沈下橋に到着。


沈下橋付近の東岸側は、やや広い川原になっていて、一応キャンプ場ということになっているようです。トイレもあります。ちょっと勇気は必要ですが。
長生沈下橋のたもと(四万十川西岸)から、鷹の巣方面を向いて(鷹の巣山の頂は、ここからは見えないようです)。


鷹の巣砦奪還後の例の名シーンは、恐らくここが舞台なのだろうと思われます。 
長生沈下橋と、山際を走る予土線(四万十川東岸から)。


<夕陽を破片のように照り返す川面の向こうを、宇和島行きの小さな列車が走っていく。沈下橋の影が、川原には長く延びていた。助けた憑坐たちを介抱していた高耶は到着した救護車にひとりひとり運び込むのを見送って、背後の山を振り返った。鷹の巣山の斜面はところどころまだ完全に消えきっていない煙が細くあがっている>(27巻『怨讐の門 黄壌編』132〜133ページ)
四万十川東岸の川原から、その鷹の巣山方面を向いて。

<日も傾いた川原には、隊士たちが集まっている。戦勝を祝う声も今日ばかりはあがらなかった。堂森たちの前に高耶が現れたのは、それからほどなくのことである。(略) 「本当のことを教えて下さい。あなたは本当に上杉景虎なのですか」 (略) 男たちは息を詰めて答えを待っている。高耶は一度眼を閉じると、おもむろに腰からサバイバルナイフを抜いた。(略) 「オレが上杉景虎だったら許せないと思う奴は、これでオレを刺せ」>(27巻『怨讐の門 黄壌編』134〜135ページ)

<「なぜじゃあ! なぜ隊長が上杉景虎なんじゃあ!」 「信じちょったのに!」 (略) 怒りか嘆きか判別のつかない声は止むことなく、浴びせられる猛烈な罵声に高耶は耐えた。川原石を投げつけられ、額にあたって血が流れても高耶はこらえた>(27巻『怨讐の門 黄壌編』136ページ)
仰木高耶が上杉景虎であったことは、隊士たちにとっては裏切りだったのでしょうけれども、高耶さんにしてみたら、最初の動機こそ不純だったかもしれませんが、赤鯨衆に身を置いていたのは、紛れもなく自身が赤鯨衆という場を必要としていたから、なんでしょうね。「生きることへの復讐」を誰よりも必要としているのは、高耶さんのはずです。越後を追われ自刃し、死後も謙信の命で怨霊調伏に奔走した上杉景虎が、知らぬ間に総大将を下され何もかもを失った仰木高耶が、住む場所も愛する者も自らの命も奪われた少数民族の鬼八が、復讐を必要としないで誰が必要とするでしょう。

隊士たちの気持ちは、きっと誰よりよくわかるはずの高耶さんなのに、彼らから石を投げつけられるなんて。でも、そんな時でも、裏切られたと感じた隊士たちの痛みもわかるから、言い訳しなかったんでしょうね(直後に高耶さん自身が語っているように、隊士たちの本質を冷静に分析していたからというのもあるのでしょうけれど)。それを傍らで見ていながら、止めに入らなかった直江の心も痛い…。

写真は、高耶さんのマネをして沈下橋に座るオレ。
<高耶はひとり、ずっと沈下橋の上にいた。欄干のない橋は夜になるとあまり通る車もないのか、高耶は橋の上に座り込み、川に足を投げ出して、下流のほうを見つめている。近づいていって、直江が声をかけた>(27巻『怨讐の門 黄壌編』142ページ)

大友との交渉が成功したこと、織田に不穏な動きがあることなどの情報を互いに伝え合った後、立ち上がって歩き出そうとする高耶さんの腕を直江が掴み、≪力≫をもう使わないことを再度約束させたのでした。

<「無茶はしねえよ」 橋の上を先に歩いていく高耶の背中を、直江は見つめた。(あなたは強い……) 強すぎて不安になる。どこまでも純化されていくような高耶が、本当は怖かった。(略) 一方で、彼の弱さを……独占している。この優越感は何だ。(略) 隊士たちは知らない。力強く拳を振るうあの腕が、なまめかしく絡み付くことを。千里を駆ける鋼の脚が存外柔らかく折れることを。強靭な腰がしなやかに波打つことを。万里に響く咆哮が弱くあえかな悲鳴に変わることを。この自分の腕の中でだけ>(27巻『怨讐の門 黄壌編』146〜147ページ)。

そうかそうか。この沈下橋の上を歩きながら、直江はそんなことを思っていたんだな。こんな時に不謹慎な妄想を。直江ってどこまでいっても直江だな。などと言いつつ、私もこのくだりは大好きだったりするんですけどね(笑)。



例によって、川の中にお邪魔しまして、防水カメラのペンタックスWG−3で水中を撮ってみました。四万十川の中はエメラルドグリーンの世界。透明度はさほどでもなさそうですが、小魚がたくさんいます。ここでもツンツンとドクターフィッシュのように足を食べられてしまいました。


川遊びをして、途中で買ったお弁当を食べて、2時間ほど楽しんだ後、長生沈下橋を後にします。

写真は、長生沈下橋遠景(北から)。

四万十の風景は本当に美しいです。アクセスしにくいですし、ミラスポットとしてのインパクトは薄いかもしれませんが、ミラージュ云々言う前に先ず圧倒されます。名物も色々ありますし、是非足を運んで頂きたい場所のひとつです。
最寄の半家駅から予土線に乗り、再び宇和島経由で松山へと戻り、今回の旅は終了。

私と相方は二度目の江川崎&星羅四万十でしたが、前回は行かなかった江川崎より上流部分へ行くことができましたし、さりげなく?長生沈下橋のミラツアも盛り込むことができて満足な旅となりました。

次に四万十ツアーに行くとすれば、やはり、大正周辺でしょうか。個人的には、先日、運転免許を取得しましたので、レンタカーで行くのもありなんですが…、でも、四万十は車で通り過ぎるには、もったいなさすぎる気もします。
道の駅とおわで、色々買ったお土産の中から一部をご紹介。


四万十の地栗ジャムと、四万十紅茶を使ったロイヤルミルクティージャム。


どちらも濃厚な味わいで、オススメです。



2016.04.22 up







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