珠玉の(非公式)高耶さんソングを中心に12曲で振り返る

仰木高耶、魂の軌跡






直江視点オンリーの直高ソング集を作っておきながら、
高耶さん視点がないというのはけしからん!
…というわけで、作ってみました高耶さんイメージソング集。
直江の時と同様、今回も、
「高耶さんだ! 高耶さんがここにいるっ!!」
と思った(思い込んだ)曲を中心に(一部赤鯨衆ソングも含め)、
高耶さんの魂の軌跡を辿ってみようという趣向です。
今回もおおむね本編の時系列に沿って紹介してみようと思います。
ご覧になる前に以下のことにご注意下さい。

・高耶さんへの愛でいっぱいいっぱい
・最終巻までのネタバレてんこ盛り
・世代の知れる懐メロ多し
・全部が全部男性アーティスト
・おおかた皆さんご存知の有名ソング
・独断と曲解と個人的シュミに満ち溢れた選択眼



なお…、
歌詞は、リンクが貼ってある「うたまっぷ」を参考にして頂けるといいかと思います。
歌詞の内容がミラージュと特にシンクロしているように(私が)感じられた箇所には、
「○段落目○行目」と表記しています。この表記は「うたまっぷ」を元にしています。

また…、
参考動画として、YouTube等の動画へリンクを貼っています。
動画が削除されていた場合はご容赦下さい。
ボリュームは適当に調整して下さい。

よろしいですか?
では、始めますよ?

高耶さんへの愛を胸にレッツゴー。






これぞ仰木高耶!
最初の高耶さんソングは、誰もが真っ先に思い浮かべるであろうこの不朽の名曲。


尾崎豊  15の夜



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♪ 1段落目 3行目 「やりば〜」


「深志の仰木」
高耶さんがそう呼ばれ、怖れられていたのは中学生の頃。
父親が事業で失敗し、両親は離婚。
味方であるはずの父親は酒乱になり家庭内で暴力を振るい、
金の話に巻き添えになりたくない周囲の大人たちは手の平を返したように厄介者扱い。
誰も頼れない。誰も信用できない。周りはすべて敵。
そんな状況で、必死になって妹と自分自身をすべてから守っていた高耶さんが
近づく者すべてに牙を剥くようになったのは当然とも言える成り行きだったと思います。
高耶さんが煙草を覚えたのもこの頃です。
身も心も傷だらけになり、やり場のない思いを抱えながら、
張り詰めた精神を紛らわすために、苦い煙を胸に吸い込んでいたのでしょう。



♪ 1段落目 8行目 「とにかく〜」


家はまるで戦場。
そして、学校も、高耶さんにとって癒しの場にはなりませんでした。
教師たちは片親の不良というレッテルを貼り、
生徒たちは怖れて近寄らない。
そんな高耶さんが身を寄せたのは、不良グループの溜まり場でした。
バイク、カツアゲ、窃盗、シンナー。
あらゆる非行に手を染めていく高耶さん。
でも、高耶さんが不良グループに身を置いていたのは、
つるみたかったからではなく、ただ単に居場所を求めていたからなのでした。
自分の存在価値を見出せず、その心はいつも孤独に打ち震えていたに違いありません。


♪ 1段落目 11行目 「盗んだ〜」


「中学んとき、バイク盗んで乗り回したことがあってさ」
直江に向かって、高耶さんがそう過去を吐露したのは5.5巻『最愛のあなたへ』でのこと。

「あのパワーのせいでさ、まるでてめーが強くなったみたいに錯覚すんだよな」
「周りがすっとんで何も見えなくなんじゃん。夜だしさ。それがよかった」
「このままどっかにぶつかって死んでもかまわねーとか、本気で思った」

心に傷を隠し持つ、普段は寡黙な少年が、
直江にだけは心を開くように自分の過去をぽつりぽつりと語っていました。
しかし、この直後に、直江の裏切りとも取れる行為に遭うのは、運命の皮肉でしょうか。
その後、高耶さんは次第に景虎の記憶を取り戻し、カリスマ的統率者として覚醒していくわけですが、
彼の抱く反骨精神、弱者へのいたわり、真実へのあくなき探究心…それらの原点は、
取りも直さず、このナイフの切っ先のように尖りまくっていた不良少年の中にあるのだと思えてなりません。

盗んだバイクで夜の闇を駆っていた少年。
刹那的な陶酔の中にしか自由を見出せなかった無力な子供。
そのやるせない心を赤裸々に歌い上げた「15の夜」は、正に仰木高耶の原点ソングと言えるでしょう。






次は、人間が生きる限り背負わなくてはならない「業」を歌った曲。
ミラージュにおける「換生者の業」に置き換えて読んでみましょう。


BUMP OF CHICKEN  カルマ



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♪ 1段落目 「ガラス玉〜」


「ガラス玉」は言わば霊魂、「陽だまり」は温かい血潮の流れる肉体。
肉体を奪って換生すれば、元の持ち主の霊魂は嫌でも居場所を奪われあの世へいくしかない。
その罪深さをわかっていながらも、
そうすることでしか生きながらえることができないのが換生者のさだめ。
「本来ならこの体で仰木高耶を名乗る、オレとは違う誰かがいたってこと?」
自分が換生者だと知った時から、高耶さんは罪悪感を抱き続けます。


♪ 4段落目 「必ず〜」


「僕ら」とは、上杉景虎と仰木高耶のことだと取れないでしょうか。
片や、四百年もの間、冥界上杉軍の総大将として生き続けてきた換生者。
片や、そんな記憶など微塵も残っていないただの高校生。
景虎には高耶の持っていない冷静さや統率者としての能力が備わっているし、
高耶には高耶にしかない飾り気のない優しさや純真さがある。
それでも、二人は全く別人のようでいて、根の部分では繋がった一人の人間なのです。
記憶を失っていても、二人は必ずひとつになる運命。


♪ 6段落目 「ガラス玉〜」


限りある肉体を奪って生きる人間の業は、
換生者のみならず、蘇った死者すべてに共通するものです。
生のあり方が変わる。肉体の死が人の死を意味しなくなる。
これは後の四国編以降におけるミラージュの重要なテーマでした。
現世に迷う死者をあの世へ送ってきた景虎。
しかし彼自身も死者であることに変わりありません。
生死のくびきは厳然としてなくてはならない。
それでも死者の存在欲を否定しきれないのは、彼もまた死者だったからなのでしょう。


 最終段落 「忘れないで〜」


死者である景虎の想いと、現代を生きる高耶の願い。
そのどちらも失えない彼はやがて、生き人を守りながらも死者の思いも否定することのない、
「1と0の間」にある答えを模索していくことになります。





3曲目は早くもテンションクライマックスなこの一曲。
これは本編のどの部分と言うよりも、「超番外編」的なイメージで。
例えば、「夜を統べる瞳」。或いは、「聖痕」。



GLAY 誘惑



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♪ 1段落目 「時に〜」


溺れてみたい…。
高耶さん自身は絶対に認めないであろう、胸の奥底に隠れた本心。
直江の手に堕ちることを本当は切に願いながらも、それを何よりも怖れている高耶さん。
堕ちてしまえば楽なのに、堕ちたら最後、直江はもう自分への興味を失くすかもしれない。
直江に負けた自分など、直江にとっては何の価値もないだろうと。
しかし、そんなジレンマも、直江の巧妙な誘惑の前には抵抗虚しく、
坂を転げ落ちるように本能のままの欲望へと傾いてゆき…。


 4段落目 「KISS〜」


犯した罪さえ愛したい…。
景虎の邪悪なまでに貪欲な一面を垣間見るようです。
直江が自分のために重ねる罪。
それは直江がどれだけ自分に執着しているかを計る最も正確な物差し。
自分を愛している証であるならば、どんな酷い罪さえ許してしまう。求めてしまう。
そんな爛れた欲望が行き着く先は、
互いの立場ももどかしい理性もすべて置き去りにし、
二つの肉体だけあればいい快楽の世界。


♪ 6段落目 「ZERO〜」


紳士の仮面も、臣下としての分別もすべてかなぐり捨てた直江は正しく最強。
そして、その情熱に焼かれている瞬間、高耶さんは生きていることを最も強く実感するのでしょう。

この曲の持つ激しさと疾走感は、
本能のまま絡み合う高耶さんと直江の、めくるめく官能シーンのイメージにぴったりです。






さて、本編の流れに戻って4曲目です。
直江の「死」を経て、偽装現実の中にいる高耶さんを思い出してみて下さい。


CURIO  粉雪



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♪ 1段落目 「Ah-」


誰よりも白い雪が似合う人、高耶さん。
13巻『黄泉への風穴(前編)』の登場シーンでは、
力が暴走して苦しみながら倒れこんだその体に無数の小さな雪が舞い降りていました。
「はやくきてほしい」そう念じながら思うのは、懐かしいあの男のあたたかい腕…。


♪ 4段落目 「Ah-」 


素直に向き合うことができぬまま直江を失った高耶さんは、
小太郎を直江だと思い込むことで自分自身を騙し、
絶対に失えない者の死という過酷な現実から目を背けていました。
しかし、人間らしい感情を持たないコンピューターのような小太郎に
「直江」の身代わりができるはずもなく…寂しさに震える日々。


♪ 最終段落 「両手〜」


直江の想いを決して振り返ろうとしなかったのは、

見返りのない愛しか信じられなかったから。
振り返って、いつか離れていくのが怖かったから。
それでも高耶さんはどこか心の隅で信じていたはずです。
直江がどんなに冷たい言葉を投げつけようとも、自暴自棄になろうとも、
最後に残るのは、高耶が求める時にいつでもぬくもりをくれる、
あの奇跡のような思いやりであり、無償の愛なのだということを。
なのに…小太郎直江にはそれがない。
寒くて、傷を負って震えているのに、手を伸ばしても、まるで雲をつかむように手応えがない。
失くして初めて気づく、決して失ってはならなかったもの。
この頃の、傷つき焦り、愛情に飢えた高耶さんは本当に痛々しいほどでした。





「粉雪」がこの頃の高耶さんの痛みを「静的」に歌った歌だとするならば、
次の5曲目は、それを「動的」に歌った歌だと言えるでしょう。


X JAPAN  紅



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♪ 4段落目「人波〜」


13巻で、力の暴走のために憑坐を死なしてしまった高耶さん。
心身ともにダメージを負った彼に、
小太郎直江は憑坐の死など動揺するほどのことではないと、
本当の直江ならば決して言うはずもない非情な言葉をかけ、
傷ついた高耶さんを一人残して去ろうとします。
直江なら自分の気持ちを察し、黙って抱き締めてくれるはずなのに。
期待したものが、直江から得られない。
直江の前でシャツを肌蹴させるような真似までしたのに、
返ってくるのはちぐはぐな反応ばかり。
一人空回る高耶さんの動揺と苛立ちは募る一方で…。


♪ 6段落目 「お前〜」


「……おまえが、わからない」
高耶さんは耐えかねたように小太郎直江へ訴えます。
「おまえの眼にはいま、なにも映っていない」
「オレが見えてるんだろう? ちゃんと見えるだろう、まっすぐ見ろ」
「直江。オレの眼を見ろ。この眼、まっすぐちゃんと見ろ!」


♪ 5段落目&7段落目 「紅〜」


小太郎直江の瞳の奥に望むものを見出せなかった高耶さんは声を荒げて叫びます。
「もう何も感じないのか。オレのことも、もうどうだっていいことなのか」
「オレはいまでもやめてない。いまだってずっと考えてる」
「どうしたら一番いいのか。どうあるのが一番自然で一番いいことなのか」
「探してる、考えてる、こんなに! なのにおまえはなにも探していない!」
「オレたちはこれからだったんじゃないのか!」
「これから探し出すんじゃなかったのか!」
「なにもかもこれからだったのに!」

激情のまま迸るTOSHIのシャウトは、
高耶さんの痛切な心の叫びそのもののように聞こえてきます。





続いての2曲はEXILEから。
2つとも高耶さんソングに…とススメて頂いた曲です。
先ず6曲目は、直江と離れて独り祖谷にいる高耶さんを彷彿とさせるバラード。


EXILE  優しい光



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※歌が始まるのは、1分15秒辺りです。



♪ 1段落目 1行目 「優しい〜」

♪ 2段落目 2行目 「いつも〜」



鬼八の毒に犯された高耶さんが霧の山荘を抜け出し、
惨めな放浪の末に辿り着いたのは、霊地・剣山の麓にある渓谷でした。
他に誰もいない。
淡い月光、森の暗がり、沢のせせらぎ。
物言わぬ自然だけが、ささくれ立った心を癒してくれる。
そんな時、ふと思い起こすのは、他ならぬ直江のこと。


♪ 4段落目 「悲しい〜」


山荘で別れを告げた時の、直江の顔に浮かんだ衝撃と戦慄の色。
どんなに直江を悲しませるかわかっていた…。
けれど、自分が直江にしてあげられることは何もない。
大人しく彼のもとを去ること以外。
直江の本気と覚悟ならもう充分わかった。
わかったからこそ、去らなくてはならなかった。
自分も直江を愛しているから。彼を死なせたくないから。

柔らかい月明かりに促されるように、直江への想いはとめどなく溢れ…。


♪ 7段落目 「君は〜」


もはや寂しいという感情を抱くことさえ許されぬ身体になってしまった高耶さん。
肉体はただの抜け殻のようで、生存本能に任せて生きるだけの日々。
それでも、あの包容力のある、父性すら感じさせる直江のぬくもりだけは、
切ないほど恋しく思い出していたに違いありません。


 最終段落 「君の〜」


「永劫の孤独を、埋めてあまりあるほどの幸福を、おまえに」
これは高耶さんが後に、熊野での戦闘の最中に直江に告げた言葉ですが、
高耶さんはずっと以前から…、二人の関係に亀裂が入っていた時も、
本心ではそう願っていたのではないでしょうか。
直江の苦痛を拭い去ってやりたい、その孤独を優しく照らしてやりたい、と。
直江が高耶さんにそうしてくれたように。

祖谷の山中で、独り月を見上げる夜。
ただひたすらに「しろいの」を飛び散らせるばかりではなく(それはそれでよいのですが/笑)、
こんな風に静かに直江のことを想っていた瞬間もきっとあったことでしょう。





次の7曲目は、赤鯨衆に身を置く高耶さんと直江の愛のテーマ。
人知れず密かに愛を紡ぐ二人に想いを馳せて下さい。


EXILE  ふたつの唇



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※歌が始まるのは1分20秒辺りです。



♪ 1段落目 「君〜」


怒涛の勢いで赤鯨衆を勝利へと導いていく西の軍団長・仰木高耶。
隊士たちの崇敬の念を一身に集める彼にも、脆い一面はあります。
いや、むしろ、表の顔が隙なく完璧であればあるほど、
その反動のように彼の内面には迷いや怖れが満ち溢れていたはずです。
本当に怨霊を肯定していいのか。
それは生き人の敵になることじゃないのか。
そんな罪を背負う覚悟が、本当に自分にあるのか。
だけど、死人の生存欲を否定することはできない。
自分も死人。自分も今は生きたいと願っているから。
生きて、生きて、直江の「永遠」を確かめたい。
死にたくない、死ぬわけにはいかない…。

高耶さんの心を裸にさせて、そんな柔な部分を抉り出せるのは、直江という男だけです。
直江の言葉じゃないランゲージで高耶さんの心と身体は幾度宥められたことでしょう。


♪ 5段落目 「夜〜」


「……橘義明は出ていきました。ここにいるのは、ただの直江信綱です」
――――ある時は、アジトの一番奥にある高耶の部屋で。
「何をもたもたしてる。オレをいつまでも待たせるな」
――――ある時は、四万十川に浮かぶ屋形船の中で。
「ずっと……そう……ずっと(名前を)呼び続けてくれ……ずっと」
――――ある時は、携帯電話の電波に乗せて。
「声の漏れかける口元を、直江の厚い掌が覆う。声を遮り、気配を殺して、忍びやかに求め合う」
――――ある時は、キャンプ地のテントの中で。

人目を避け、夜闇に紛れ、熱く交わる二人。
軍団長と一隊士の仮面をそっと外して。


♪ 7段落目 2行目 「会えない〜」


「オレのそばに来たいなら、一番下から自力で勝ちあがって来い」
ようやくひとつ所にいられるようになった直江に、
高耶さんは容赦なくそう告げました。
それくらいできなければ、おまえの想いなど信じない…、
ただそばにいるだけでは愛を確かめられない、満足できない…とでも言うように。
本当に貪欲なのは、高耶さんの方なのかもしれません。



♪ 8段落目 「ほか〜」



「隊士たちは知らない。
力強く拳を振るうあの腕が、なまめかしく絡み付くことを。
千里を駆ける鋼の脚が存外柔らかく折れることを。
強靭な腰がしなやかに波打つことを。
万里に響く咆哮が弱くあえかな悲鳴に変わることを」

戦闘集団という禁欲的な場に身を置き、誰より勇ましく隊士たちを率いていながら、
直江の前でだけはこんなに艶かしい姿態を晒している高耶さん。
彼ほどエロティックな人を私は知りません。


こんなに素敵な高耶さんソングを教えて頂けて、とても嬉しいです。
蒼さま、本当にありがとうございました!






さて、8曲目は「GTO」のテーマソングです。
GTO?
そりゃもちろん、「グレート・隊長・仰木」のことに決まっちょるき!



反町隆史  POISON



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♪ 1段落目 「いつまでも〜」


四百年忠誠を尽くした上杉を追われ、生きる資格を剥奪されても、
毒を垂れ流す有害な身体になり果てても、
自分にはこの闇戦国でまだやることがある。
倒すべき敵がいる。生きねばならない理由がある。
そんな想いに目覚めた時、高耶さんはその熱血ぶりを遺憾なく発揮させます。



♪ 2段落目 「冷めた〜」


敗戦の失意から飲んだくれる者、力なくうずくまる者、荒れて暴力を振るう者。
そんな隊士たちを、仰木隊長は有無を言わせず殴りつけ、
「目を覚ませ! 怨霊ども!」と一喝しました。
「人様の体借りといてアル中になるくらいだったら霊体のまま酒樽にでも浸かってろ!」
「荒れるくらいなら思い出せ。生きるっていうことはこういうことだったはずだ」
「もう逃げ道なんか探るな。徹底的に『生』と向き合ったらどうだ!」


♪ 8段落目 「自由〜」



窪川攻防戦の前には、初めて壇上に上り、自ら檄を飛ばしました。
「もう二度と『上士』も『郷士』も生みたくないなら、戦うしかない」
「オレたちはまだ翼が折れたわけじゃない!」
「負けたくない奴はついてこい。勝てると信じるなら必ず勝つ!」
「信じる奴のために、オレは命を張る!」

雑兵たちの寄せ集めだった怨霊集団が、いつしかひとつの信念によって結束し、
四国外の名立たる武将たちとも互角に渡り合えるまでになったのは、
この厳しくも熱いハートを持った隊長なくしてはありえなかったでしょう。



♪ 3段落目&10段落目 「言いたい〜」

♪ 最終段落 「まっすぐ〜」


肉体を持たない死者に生存権はないのか。
死者は怨念を晴らすために、「生きて」はならないのか。
この世に居場所はないのか。

この果てしない命題に、答えなど出ないのかもしれません。
それでも…、
「オレはこの世界に対して『無力』になりたくない」
そう願い、そこにある現実と絶え間なく関わり、戦い続けていくことが、
高耶さんが見出した偽ることのない唯一の「真実」だったのだと思います。






9曲目は、私の大好きなTHE BACK HORNから。
土佐の無骨な男たちの生き様を歌った、赤鯨衆ソング。
時間は遡り、彼らの黎明期を描いた『赤い鯨とびいどろ童子』のイメージです。



THE BACK HORN  コバルトブルー



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♪ 2段落目 「闇〜」


始まりはいつのことだったか。
土佐に数多の怨霊たちが蘇ってきたのは…。
闇の中から、潮騒の音に呼ばれるようにして、彼らは再びこの世に帰ってきました。

嶺次郎と草間は、戦で命を落とした一領具足。
二人を中心に、やがて行き場のない憑依霊たちが集まり、
「現代」に順応し始めたのも束の間、
同じように蘇ってきた怨将に生活の場を踏みにじられ、従属を迫られます。


♪ 4段落目 「だけど〜」


力無きがゆえに虐げられ、抵抗むなしく死んでいった人生を繰り返すために蘇ったわけじゃない。
奪われないためには、強者につくのではなく、自らが強くならなければならない。
「怨将不服従」を掲げた雑兵たちは、武器を手に取り、徹底抗戦を誓うのでした。


♪ 5段落目 「俺達〜」


心優しき村医者・中川掃門。
ひょうきんで酒好きな岩田永吉。
働き者の堂森猪ノ介。
 ちゃっかり者の一蔵に、情報通の真木。
土佐勤王党の幕末霊・染地伸吾…。
無名の雑兵集団は一丸となって戦い、浦戸城を奪還します。


♪ 6段落目 「この〜」


勝利を上げた夜、桂浜に下りて歓喜し、酒を酌み交し合う嶺次郎たち。
土佐の男たちは「いごっそう」。
浜辺は呑めや歌えやの大宴会。
やがて、草間が「広く仲間を募り、虐げられている怨霊を解放するために戦うこと」を提案し、
彼らは自らの集団にこう名をつけたのでした。
「土佐赤鯨衆」と。
死んでも死なない想いをそれぞれの胸に抱いて…。


♪ 9段落目 「さあ〜」

♪ 10段落目 「俺達〜」



「静かな朝だった。しかし力に満ちた朝だった。
ここから始まる熱く激しい日々を、嶺次郎は予感していた。
生前は越えられなかった壁を越え、そして遥か先へ。
この男たちと一緒ならば、行けるような気がしていた」

死してなお自由を求める豪放な男たちの船出にふさわしい一曲です。





再び本編に戻って…10曲目。
高耶さんから直江に捧ぐ、究極のラブソング!


Mr.Children  Everything (It's you)



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♪ 1段落目 「世間〜」


志を同じくする者、慕ってくれる者、支えてくれる者。
自分を必要としてくれる多くの隊士たちに出会い、
高耶さんは彼らの中で再び「生」を得たのでした。



♪ 4段落目 「愛す〜」



しかし、魂核寿命という爆弾を抱える高耶さん。
無謀な戦いを繰り返し、戻れない場所へと突き進もうとする彼の心には、
その苦しみを分かち合うように、いつも直江が寄り添っていました。


♪ 5段落目 2行目 「何を〜」


自分にとって直江という存在は何なのか。
高耶さんがそれを本当の意味で自覚し、認めたのは、四国においてではなかったでしょうか。

四百年換生してきたのは、本当は使命なんかのためではなかった。
ある時高耶さんはそう語りました。
自覚がないだけで、使命の前に換生したい別の理由があったのだと。
高耶さんはその「理由」を口にはしませんでしたが、直江に注がれたひたむきな視線がその答えでした。

どんな犠牲を払っても失えないもの。
ともに歩んでいきたいもの。
直江信綱――それが高耶さんの…景虎の、生命の名だったのかもしれません。


♪S 8段落目 2行目 「僕が〜」


直江を死なせないために、彼を置き去りにしたこともありました。
これ以上苦しませないために、彼の中から自分の記憶すべてを消去しようとしたこともありました。
本当は何より失いたくないのに、身を切るような思いで、すべては直江のために。
しかし…


♪ 最終段落 2行目 「何を〜」


直江にとってはむろん、高耶さんのいない世界など意味はありません。
高耶さんは結局直江の想いをすべて呑み、受け止めたのでした。
そして、そんな直江を受け容れるうちに、
いつしか高耶さんも直江を手放すことなど二度とできなくなっていました。

「――そばにいてくれ」
そう小声で囁いたのは、加藤清正との会談の後でした。
「この島を、怨霊たちの居ていい島にする」
会談でそう宣言しながらも、心の中は己が本当はどこに向かおうとしているのか、
葛藤と不安でいっぱいだったに違いありません。
その罪に汚れた道を、ともに歩いてくれ、そばにいてくれと言える相手は、直江だけです。
何を犠牲にしても…、世界中を敵に回しても高耶さんについていく直江だったからこそに違いありません。

誰かを求めること、誰かに求められること。
そして、求められることを許し、求め合うこと。
四百年連れ添った彼らの究極の愛の形がここにあるように思えてなりません。






ここでひとつ、シブイ名歌を織り交ぜたいと思います。
11曲目。孤高の魂が奏でる悲壮なソウルソング。


谷村新司  昴



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♪ 1段落目 1行目 「目を〜」


普通の高校生だった頃に抱いていた淡い夢?
長い愛憎の末にいつか掴もうと手を伸ばした「岬の家」の甘い幻想?
瞳を閉じてみて想ってみても、未来はもはや実在的な形を結んで浮かんではこない。
目を開けて、現実と向き合えば、そこにあるのは荒涼とした一筋の道。


♪ 1段落目 3行目 「ああ〜」


或いは謙信公、或いは美奈子。
また或いは関わってきた多くの人々。
世を去った先人たちの想いは、
既に滅んだ星の光がなお地上に届くように、今もこの身を照らしてくれる。


♪ 2段落目 1行目 「呼吸〜」


魂の腐臭は日に日に濃くなり、魂核の寿命は否応なく迫り来る。
しかし、やがて訪れるその終末のために、この歩みを止めることはない。
世界のあり方の模索、流された人々の救出、信長との最終決着。
信じる道を、自分が示せるこの一歩を確実に歩いて行くだけ。


♪ 2段落目 3行目 「ああ〜」


とうとう現代人をも巻き込み、日本中に蔓延してしまった≪闇戦国≫。
今を生きる生き人と蘇った死者の間に真の和解はないのかもしれない。
生き人が脅かされず、尚且つ死者に己の死と向き合う時間を許す方法。
裏四国はその一つの答えだけれども、不幸な死は毎日起こり、怨霊も絶えることはない。
だから、せめて…

「私という死者が伝えたいのは、ただひとつです。
生きているうちに、幸福になってください」


♪ 3段落目 1行目 「ああ〜」


生き人と死人。自分と他者。己の中の生と死。
この世は到底「和解」できそうにないものばかり。
それでも、一人でも多くの人がこの壁を乗り越えて行けることを願って。
そう、自分が長い苦しみの末に、「愛」を知ったように。


♪ 3段落目 3行目 「我〜」


天への階段を駆け上るように、逝ってしまった高耶さん…。

ところで、「昴」の名で知られるプレアデス星団は、若い星の集団で、
核融合の速度が速いために寿命は比較的短命とされているそうです。
地球からの距離は400光年。
つまり、今私たちが見ている昴は400年前に発せられた姿ということですね。
そう考えてみると、この星団は二十二歳で早逝した高耶さんそのものであり、
その光は上杉景虎の四百年を象徴しているように思えてきます。
今度冬空に輝く昴を見上げる時は、高耶さんのことを想ってみたいです。





いよいよラスト、12曲目。
最期の時を迎える高耶さんの胸のうちを代弁したようなこの曲。
わが高耶さんは永久に不滅です!


CHEMISTRY  最期の川



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♪ 2段落目 「歩いて〜」


四百年という気の遠くなるような長い年月。
使命という名の下に戦い続ける日々は過酷で、
大切な人々を失い、身を切るような痛みも味わいました。
心が欲するものを素直に求められないために神経を擦り減らしもしました。
自己否定の言葉に心が埋め尽くされたこともありました。
そんな艱難辛苦に満ちた道のりも、
最期の時には、高耶さんの中で愛おしいものに変わっていたことでしょう。
それは、直江という魂がいつもそこに寄りそっていたからです。


♪ 4段落目 「しあわせ〜」


直江から与えられたものは、
「幸せ」なんて言葉では言い尽くせないのではないでしょうか。
景虎という魂はもともと深く病んでいました。
怨念、孤独、憎悪、不信、恐怖…。
そんなありとあらゆる負の感情から解き放ってくれたのは、
直江の、時に狂気を帯びるほどひたむきな愛でした。
気休めの優しさを与えるのではなく、
醜態を曝け出し、もがきながらも一筋に景虎だけを見つめ、求めてきた直江にしか、
その魂は救い出せなかったのだと思います。
二人が磨耗しながらも、最後に到達し、わかち合ったものは、
「幸せ」より大きな「何か」だったのでしょう。


♪ 7段落目 「姿〜」


肉体は滅んでも、もう見ることも触れることもできなくても、
高耶さんの魂は直江の中にあります。
たとえ、それすらいつの日か粉々になって消え去ってしまうとしても、
高耶さんの想いはいつまでも…いつまでも、直江とともにあり続け、
陽射しのように直江の心にぬくもりを与え続けることでしょう。
遠い未来に…、赤茶けた荒野が広がる時代が訪れようとも、
きっと、直江を孤独にさせはしません。


♪ 8段落目 1行目 「どれだけ〜」


「……すまな……なおえ……おまえ…残してく……」
「悔い…あるとしたら……それだけ……っ」

直江に辛い思いをさせたくない。
幸せを感じて欲しい。
どれだけ大切に思っているか、愛しているか、わかって欲しい。
今までの苦痛と孤独を癒して余りあるほど満たされて欲しい。
そんな風に、高耶さんは思っていたのではないでしょうか。


♪ 8段落目 7行目 「永遠〜」


「オレは生きて確かめる」
「この世の最期のひとりになるまで生きて、おまえの『永久』を確かめる!」

ずっとそう言い続けていた高耶さん。
でも、最期の時、高耶さんはすでに信じることができていたはずです。
直江の中で、自分はずっと生き続けられるのだということを。


♪ 最終段落 「何も〜」


「――ありがとう……」

それが、高耶さんの口から紡がれた最後の言葉でした。
一片の悔いもなく、死後の「生」を生き抜いた…。
この道を突き進むことを許し、ともに歩んでくれた直江。
その直江に、高耶さんはどうしても最期に自分の肉声で伝えたかったのでしょう。
自由にならない肺を必死で膨らませ、最後の数呼吸を使って搾り出すように口に乗せた言葉。
その感謝の言葉の背後にある万感の想いに、涙を流さずにはいられません。

直江…ありがとう。
高耶さん、ありがとう。

直江の心の中にいつまでも高耶さんがいるように、
私たちの心の中にも、求めればいつでもそこに高耶さんはいるのです。

いつまでも、どこまでも、高耶さんとともに…。







長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。
前回の直江編と対を成す、今回の…
「珠玉の(非公式)高耶さんソングを中心に12曲で振り返る 仰木高耶、魂の軌跡」
いかがでしたでしょうか。
前回にも増して力んでしまっている上、くどい文章でしたが、
少しでも共感して頂けると嬉しいです。
そして、これらの名曲をどこかで耳にした時、
高耶さんのことを思い出して頂けたら、それ以上嬉しいことはありません。


ご存知の通り、仰木高耶という人物像は、物語が展開するにつれて大きな変遷を遂げます。
誰も寄せ付けないほど荒みながらも愛情に飢えていた子供。
景虎というもうひとりの自分に戸惑いながらも戦いの渦中に巻き込まれていく少年。
冷徹なまでに完璧な統率者として覚醒していったかと思えば、
今度は直江の死に面して、現実逃避、記憶障害。
総大将を引きずりおろされ、毒を撒き散らす有害な身体になった時は、
完全に生存意欲を失い、死に場所を求め、半ば自暴自棄。
しかし、自分を必要としてくれる名もなき怨霊たちとともに戦ううちに、
己の生きる意味と成すべきことに改めて向き合い、
四百年の換生人生の中で初めて「使命」のためでなく、
自分の「意思」で「生きる」ことに目覚めたのでした。

これほどまでに振幅のあるキャラクターはなかなかいないのではないでしょうか。
めまぐるしく変貌するけれども、彼にはそれなりの理由があるから説得力がある。
七転八倒しながらも覚醒し、成長するその姿は作品の大きな魅力のひとつだと言えるでしょう。

直江の時は、これでもかというくらい感情移入して書いたのですが、
今回はそういうのとは少し違っていました。
完全に、乗り移ったように心を重ねるには、彼は複雑過ぎます。
でも、直江の時よりもじっくりと、一層真摯に向き合う必要がありました。
そして、彼の足跡をなぞっていくうち、熱いものが胸にこみあげ…、

私、やっぱり高耶さんのことを愛している!!

強く、そう再確認したのでした(笑)。
それにしても…ほんと、高耶さんと向き合うにはパワーが要る…。
直江氏の気持ちが少しわかったような気がしました。


「はじめに直江の愛ありき」
前回のあとがきで、『炎の蜃気楼』という物語についてそんなことを述べました。
では、高耶さんの側はどうなのか。
仰木高耶という人間について考察する時、注目したいのは、
直江にとっては高耶さんへの愛こそが己のすべてであるけれども、
高耶さんにとっては必ずしもそうではないという点です。

それはこの雑文のタイトルにも自然と反映されています。
直江のは、「直高ソング」であり、「愛の軌跡」であるのに対し、
高耶さんのは、あくまで「高耶さんソング」であり、「魂の軌跡」であるのです。

例えば、直江は高耶さんのためになら罪人にも悪鬼にもなるけれど、高耶さんは違う。
彼はどんな時も、自分の中にある信念を貫き、弱い人々のために戦おうとする。
唯一の延命手段であった烈命星を決して自分のために使おうとせず、
最期の時を覚悟しながら、信長との最終決戦へと身を投じていったように。
直江のことを何よりも失えないものとしながらも、
選び取るのはいつも、その人間愛に根ざした、彼なりの正義だったのです。
上杉を追われ、鬼八の毒に犯された彼が再び「生きる」意志を見出した場所が、
直江の庇護の中ではなく、尊厳と自由を求めて戦う雑兵集団の中であったことは、
その最たる表れではないでしょうか。

しかしもし、高耶さんが直江と同様、自分たちの愛を第一に据える人間だったなら、
私たちはここまで彼に惹かれていたでしょうか?
悲しい結末を自覚しながらも、前へ突き進む、突き進まずにはいられない…
そんな悲壮なまでの強さを持った人だったからこそ、
皆が高耶さんという人に魅了されるのです。
もちろん直江も、そんな高耶さんであったからこそ、
憧れ、崇拝し、己のすべてを賭して愛したのでしょう。

彼らの愛の悲劇は、もしかしたら、互いの愛の形が異なることに根ざしていたのかもしれません。
それでも、高耶さんは絶えず直江を一歩上の高みへと引き上げ、導いていきました。
互いを見つめ合うのではなく、同じ方向を見据えることで二人の最上を目指していきました。
そんな高耶さんの峻烈な愛によって、直江は最後に救われたのだと思います。

私たち読者にしても、めでたしめでたしのハッピーエンドによってのみ、
救いを得られるというわけではありません。
たとえ、「悲しい結末」であろうとも、
永遠へと続く二人の愛のあり方に、私は何より救われました。
それは、高耶さんという傷だらけの主人公が、
自らのささやかな幸福の内に閉じこもることなく、
常に広い世界へと目を向け、妥協しない生き方を示してくれたおかげなのです。

確かに、始まりは直江の愛だったかもしれません。
大地の最果てまで埋め尽くすほどの直江の愛。
でも、その愛を終始鮮やかに照らし出していたのは、
他でもない、上杉景虎という天に輝く星だったと言えるかもしれません。


世の中には素敵な歌が山ほどあります。
ミラージュソングもまだまだたくさん潜んでいることでしょう。
いつかまた、拾遺集的なものを作れたらなと思っています。
その時こそ、もっと力を抜いて軽やかに綴りたいものです(苦笑)。








「珠玉の(非公式)直高ソングで振り返る 直江信綱、愛の軌跡」はこちらからどうぞ


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