(一)はじめての・・・?







「なあ犬夜叉ぁ?」

「あんだぁ〜?」



いつもの旅の途中。例の如く弥勒が嘘の御祓いをした屋敷に泊めさせてもらい、例の如く男女分かれて部屋をもらい、そしてやはり例の如く男部屋の方では・・・男二人がひとつの布団の中で抱き合っていた。

弥勒と犬夜叉がこういう関係になって既に久しかった。

一頻り求め合った後で、弥勒は自分に背を向けて横になっている犬夜叉に声をかけた。まどろみかけていた犬夜叉は如何にも気だるそうに、そう返事をする。最近は初々しさの欠片もなくなって、いちゃいちゃするのはかえって気恥ずかしい。



「犬夜叉ぁ・・・」

「だから、何だよ?」


「お前、初めてって・・・やっぱり桔梗様だったのか?」

「はぁ?」


突拍子もない質問に犬夜叉は眠気も吹っ飛び、思わず振り返って弥勒を見た。「何言ってんだ?おめぇ」


「はーーっ」と弥勒は何やら切なそうなため息を吐く。「いえ、今こうしてお前を自分のものに出来るのはとても嬉しいんですが・・・私の前にお前が他の誰かのものだったかと思うと・・・」


「・・・・・・」犬夜叉は呆れたように弥勒を見ている。


「いや、贅沢だとは解かっていますよ?・・・でも、やっぱり・・・お前とは時の流れが違いますしね・・・封印されていたとは言え、お前の方がよっぽど長く生きているし、私が知っているお前より、知らないお前の方がよっぽど多いんだと思うと・・・」

「くっだらねぇ・・・」あまり馬鹿げたことを言う弥勒に犬夜叉はそう短く答えると、再び眠くなったというように大きな欠伸をし、ごろんと背を向けた。



だけど、弥勒はそんな犬夜叉の背中を抱き締め、敏感な犬耳に向かって囁く。「・・・少し、嫉妬してるんですよ?」

「んっ・・・」


少し責めるような、それでいて優しく誘いかけるかのような弥勒の声に、犬耳がピクピクッと反応する。調子に乗った弥勒は、犬夜叉の乱れたままの薄い寝巻の前へと手を差し入れた。

「あ・・・バカッ、ミロク・・・。何度・・やったら、気が済むんだよっ・・・」


「さあ白状なさい犬夜叉。お前、初めてはやっぱり桔梗様だったんですか?」指先で犬夜叉の胸の突起をいたぶりながら弥勒が問い詰める。

「っ・・せぇ。なんでおめぇにそんなコト・・・白状しなきゃ、ならねえんだよっ?」


「嫌なら、寝たかどうかまでは言わなくても良いです。ですが・・・どうなんですか?お前の初めては・・・初めて、口づけを交わしたのは・・・誰です?やっぱり桔梗様ですか?・・・まさか、いくら純粋なお前でも・・・私が初めて・・・ってことは、ないですよね?」

「んっ、んぅ・・・」指先で固くなった突起をきゅっと強く摘まれ、犬夜叉は鼻から甘い声を漏らした。



「ねえ、どうなんです?犬夜叉・・・」

「っ・・・き、ききょう・・・だよ」苦しそうに途切れがちにそう答えた犬夜叉は次の瞬間「痛っ」と悲鳴を上げることになる。弥勒が犬耳を噛んだのだ。


「なにすんだ!このクソ法師!」

「お前が悪い」

「んあぁっ!」



不満気な弥勒に犬夜叉は辟易したような態度を見せたが、さほど悪くもなさそうだった。怒った顔もどこか幸せそうで・・・。


しかし、弥勒は嫉妬で勢いづいたのか、犬夜叉の寝巻を乱暴に剥ぎ取り、首筋や肩を唇で強く吸い上げていく。


「バカッ、止めねえか弥勒っ、痕が・・痕が残るだろ?」

「良いじゃありませんか別に。お前は今は私のものなんですし」

「・・・・・」


「違いますか?」そう言いながら、弥勒は犬夜叉の下半身に手を伸ばす。

「ん・・・」


「別に口を噤む必要はありませんよ?かごめ様たちはずっと向こうの部屋で寝てるんですから」弥勒は片手で勃ち上がりかけた犬夜叉の性器を寝巻の上から擦るように撫でまわす。

「・・・・・」



「ほら、素直に言って御覧なさい」もう片方の手で犬夜叉の柔らかい唇を促すように優しくなぞった。

「ん・・あっ・・・」それにつられて犬夜叉の唇が微かに開き、小さな喘ぎを漏らした。


「ねぇ犬夜叉・・・言って下さい。お前は私のものだって・・・」

「・・・・っ、だよ?」


「はい?よく聞こえません」


「お前の・・・だよっ」やけくそっぽく言う犬夜叉。しかし弥勒はその少し苦しそうな表情を見てにやりと笑みを浮かべた。


「ここも?」寝巻きの裾を捲りあげて、弥勒は再び猛々しくはちきれそうになっている感じ易い犬夜叉の性器を手の平で直に包み込んだ。

犬夜叉は潤んだ瞳でただコクコクと首を縦に振る。


「じゃあ、こっちも?」今度は犬夜叉の後ろへ手を回して、滑らかな尻の線に沿って指を奥へと滑り込ませた。

「ん、あぁっ・・・」


「こっちも、私のものですか?」辿り着いた蕾に指を押し当て、弥勒が犬耳に向かって熱い息を吹きかける。

「お・・お前の、もんだ・・・つってん、だろ?」


犬夜叉の言い草に、腑に落ちないというように弥勒はふーっとため息をつく。「どうもお前は素直じゃないんですよね・・・」

「いいから・・・もぉ・・・は、早く・・・」


「お前は淫乱な割にはお強請りが下手ですね・・・いっそ、“弥勒様、どうかこの身体を貴方のいいように蹂躙して下さい”くらい言ってみたらどうなんだ?え?犬夜叉?」


「ばっ、バカかおま・・・・・・!!!」悪態をつきかけた犬夜叉の唇は突然わなわなと震え出し、次の瞬間それは「はぁ・・」という甘い吐息に変わっていた。

先刻放たれた精液がまだ残る犬夜叉の秘孔の中へ、弥勒がずぶっと容赦無く指を突き立てたのだ。


「ん・ン・・」

「こういうことをしないと、お前は可愛くならないんだもんな・・・」残念そうに、しかしどこか愉しむように弥勒はそう言うと、犬夜叉の中で激しく指を蠢かせ、そのどろどろとした液体をぐちゃぐちゃと音を立てて掻き回す。

「んん・・ああ・・・み、みろく・・・・・」


背中を向けていた犬夜叉は仰向けになって、自分から脚を開いた。


「“何度やったら気が済むんだよ?”さっきお前が言った言葉です」


犬夜叉は悔しそうな目を向けるが、どうやら羞恥心より性欲が勝ったらしい。

「何度でもいいから・・・もう・・・もう・・・・・」

「もう、何です?」


救いを求めるように、犬夜叉は弥勒の首へと手を回した。「もう・・・お前が、欲しい・・・」


犬夜叉の両手に引き寄せられるようにして、弥勒は自分の顔を犬夜叉の顔に近づけた。そして、中を掻き回す手は止めぬまま、目の前で熱に魘されたように自分を求める犬夜叉の淫らな表情を満足そうに眺めると、絶え間なく甘い息を漏らしているその唇に深く、深く口づけていった・・・・・





事件は、それから数日経った或る日に起こった。







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2003/01/21 up