最愛の富山ツアー

〜魚好きの高耶さんを偲んで

前 編




◆旅行日:2016年5月26日〜5月29日

◆行程:
※下線はミラージュスポット
※グレー文字は後編にて

◇5月26日〜27日:
千葉県内→(夜行バス)→富山駅→(徒歩)→富山第一ホテル→(徒歩)→富山城址→(徒歩)→富山大橋→(徒歩)→磯部の一本榎→(徒歩)→富山駅内「白えび亭」(ランチ)→(路面電車+徒歩)→富山県水墨美術館→(徒歩)→富山県立近代美術館→(徒歩)→居酒屋「だい」→(徒歩)→富山駅内「廻る富山湾」→(徒歩)→居酒屋「あらさん」→(徒歩)→剣の湯ドーミーイン富山(宿泊)

◇5月28日〜29日:
剣の湯ドーミーイン富山→(徒歩)→富山駅→(あいの風とやま鉄道)→滑川駅→(徒歩)→ほらるいかミュージアム→(徒歩)→(滑川駅)→(あいの風とやま鉄道)→魚津駅→(徒歩)→魚津城址(大町小学校)→(徒歩)→海岸→(徒歩)→埋没林博物館→(徒歩)→道の駅うおづ→(徒歩)→魚津駅→(あいの風とやま鉄道)→泊駅→(タクシー)→ヒスイ海岸→(徒歩)→越中宮崎駅→(あいの風とやま鉄道)→泊駅→((あいの風とやま鉄道)→富山駅→(徒歩)→居酒屋「中嶋」→(徒歩)→居酒屋「いろり」→(徒歩)→富山駅→(夜行バス)→千葉県内


◆同行者:相方


※このページの画像は、別サーバーに保存したものへ直リンクを貼って表示しています。表示されるまで時間がかかる場合があります。また、不具合を見つけた場合、管理人までご一報頂けますと、大変助かります。




富山と言えば、ミラージュ本編(と言うか、例外的に番外編ではありますが)の長い歴史の中で、決定的な大事件?が起きた、ファンにとっては忘れがたい場所ですね。もちろん、私もずっと行きたいと思っていた場所で、やっと念願が叶いました。

ミラージュ抜きにしても、北陸、こと富山は美食のまち。白えび、ほたるいか、ばい貝、げんげ…、そして、実は米もうまい富山は酒もうまいわけで。いやが応にも血沸き肉踊ります。

しかし、北陸新幹線なんていう贅沢なものは使いませんよ、当然のごとく夜行バスに乗り込むオレら。まだまだ頑張ります、貧乏中高年。
千葉県内を23時過ぎに出発し、翌朝7時前に富山駅北口に到着。


天候は予報通りの雨。でも、午後からはやむということなので、まあ良しとしましょう。
富山の街は、富山城や繁華街は駅の南側にありますので、駅の通路を歩いて南側へと移動。
富山駅の南口。北陸新幹線開通に伴い、駅舎も新しくなったようですね。富山県内では、以前、相倉合掌集落や高岡を観光したことがありますが(合掌造りの民宿に泊まった)、富山駅に来たのは初めてです。


それにしても、JRの駅舎って、一部の例外を除いて、似たり寄ったりのが多いですね。特に新しい駅舎は。きれいだけど、親しみがわかない…。

富山ツアーは、対象巻が5.5巻『最愛のあなたへ』だけですし、舞台となったスポットも、富山の市街地と魚津だけ。今回の日程は、往復夜行バスの1泊4日、つまり正味2日間ということになります。スケジュール的には余裕ですので、ミラージュとは関係ない場所も少し立ち寄ることにしました。
一日目は、富山城や磯部の土手など富山の市街地を回り、二日目は「あいの風とやま鉄道」で滑川、魚津、越中宮崎を観光します。

こちらは富山の市街地。赤い字は作中に出てきたスポットです(「富山第一ホテル」は推定)。緑色の文字(「富山県水墨美術館」と「富山県立近代美術館」はミラージュとは関係なく立ち寄ったスポット。富山の街は路面電車が走っていますが、ミラスポットだけなら、徒歩でも回れる距離です。

富山市街地の拡大図です。黄色いラインは、今回私が歩いた主な道のり。
主なスポットは、高耶さんと直江が泊まったと思われるホテルと、ホテルから磯部の土手へ向かう際に通り抜けた富山城趾、そして早百合の怨霊が暴れていた磯部の土手ですね。
ホテルについては、特定できそうな描写がないので、あくまで推定です。ホテルから磯部の土手に向かう際に富山城址を通り抜けた(38ページ)ということを考えると、最も富山城趾を通り抜けたくなる位置にあるのは「富山第一ホテル」かと…。ただ、ホテルから成政の行方を追って富山城趾へ向かった際、「(富山城趾の)入り口にセルシオを停めて」(89ページ)という描写があり、富山第一ホテルからすぐ目の前の富山城趾へ行くのに車とは不自然な気もしますので、富山城趾からもう少し距離のある駅前のどこかのホテルかもしれないという気もします…。その後のことを考え、念のため車に乗った、とも考えられるかもしれませんが…。ともかく、確定はできなさそうです。

さて、私たちは駅ビルの中にあったロッテリアで少し時間を潰し、8時前に富山駅を出発しました。まだ若干、雨が降っています。

駅前の道を10分ほど真っ直ぐ南下していくと、こんもりとした緑が見えてきて、そこが富山城趾です(写真前方右側)。

そして、高耶さんたちが泊まったのではないかと思われる富山第一ホテルは道路を挟んだところに建っています(写真左奥の白っぽいビル)。
↑の写真、横断歩道を渡ったところは、わかりにくいですが、橋になっていて、下を松川が流れています。


この上流の方、カーブした先に、例の、磯部の土手と一本榎があります。
富山第一ホテルの前に、一応来てみました。あまり大規模なホテルではなく、宿泊客以外が気軽に立ち寄れそうな雰囲気でもないので、中には入っていません。
ここかどうかは不明のままですが、ホテルでのシーンを一通り振り返ってみましょう。

<その夜は、富山市内にホテルをとった>(『最愛のあなたへ』29ページ)

<直江がフロントで所要をすませて部屋に戻ってくると、部屋で待っていた高耶はもうすでに横になってうたたねしていた>(『最愛のあなたへ』29ページ)

一日目、高耶さんの寝姿に危うく欲情しかけた直江は、二日目は別々の部屋をとったのでした。

<七時に上のラウンジで夕食をとることにして、二人はいったん各自の部屋で休むことにした>(『最愛のあなたへ』67ページ)

写真最上階の部分に大きなガラス窓が見えますが、そこがレストランになっているようです。
<二階のティールームで聞くと答えると、客は礼儀正しく従った>(『最愛のあなたへ』78ページ)

頼廉、頼照の二人と対談したティールームですが、こちらのホテルの二階にはそれらしきものはありません(二階は宴会場)。ティーラウンジ的なものは一階にあるようです。

<「私が今、何をしたいと考えているか。……あなたに、わかりますか」 「…………」 高耶の両眸に、次第に怒りの色が湧きおこってくる。それが憎悪に変わるまで、見つめていたいと直江は思う。高耶は息を絞りながら、警戒をこめて訊問する。「――おまえ、いったい何者なんだ……」(略)「あなたの“犬です”」 「…………」 「“狂犬”ですよ」>(『最愛のあなたへ』127ページ)

早百合事件の事後処理を終えてホテルに戻ってきた直江と、不審感を露にする高耶さんが対峙するシーン。ミラージュの中でも忘れがたい名シーンです。ここで、あの“狂犬”が誕生したんですね。
5.5巻の出だし、魚津ではあんなにラブラブ?だったにも関わらず、結局二人は富山のホテルで険悪な雰囲気のまま別れることになったのでした。記憶のない高耶さんと仮面を被った直江の蜜月の終了…。

高耶さんの記憶がいつ戻ったのかというのは、原作でもはっきりとは書かれていないのですが、この富山での出来事をきっかけに、自分と直江の間に何があったのかを知りたい、知らなくてはならないと、高耶さんは思い始めたのではないでしょうか。

この後、険悪な『覇者〜』、『みなぎわ〜』、『わだつみ〜』を経て、二人が更に長い別れを経験することを思うと、切なくなってきます。
ホテルの前から道路向こうの富山城趾を見て。

<入り口にセルシオを停めて、高耶と直江が成政のもとに駆け寄った>(『最愛のあなたへ』89ページ)

写真中央くらいの位置に、入り口があるのですが、富山城趾の出入り口は複数あるので、直江がセルシオを停めた場所は定かではありません。でも、すぐに停められるような駐車スペースはないので、道端に停めたんでしょうね。因みに、富山城趾の地下にちゃんとした駐車場があるようです。
道路を渡って、↑の写真の入り口までやって来ました。


「千歳御門」というそうです。別の場所にあったのを平成18〜20年にかけて移築したとのことですから、5.5巻当時はここには無かったことになりますね。


ここから富山城趾に入ります。
作中に富山城趾が登場するシーンは三つ。そう言えば、いずれも「ホテル→富山城趾→磯部の土手」という経路で移動しているんですね。流れとしては次の三つです。

@二日目未明、謎の霊気の発信源を辿って、ホテルから富山城趾を通り抜け、磯部の土手へ行く(38ページ)
A二日目朝、ホテルを出て富山城で犬の散歩をしていた老人から早百合姫の伝承を聞き、再び磯部の土手へ向かう(44ページ)
B三日目未明、剣の護法童子が富山城趾で成政の姿をとらえると、高耶と直江はホテルを出て成政のもとへ駆けつけ、その後成政を追って磯部の土手へ行く(88ページ)

千歳御門から入ると、左手の方に、天守が見えてきます。
<二人がその場に駆けつけた時、彼は鵺も従えずにひとりで天守閣のもとにたたずんでいた。(略) 成政は動揺しているどころか、表情ひとつ変えていない。切れ長の瞳を、涼やかに返して、磯部の土手の方向へ目をやった>(『最愛のあなたへ』88〜89ページ)


Bの成政が天守閣のもとに佇んでいたシーンです。磯部の土手は、写真右奥の方角になるかと。
佐々成政は織田の怨将ですから、もちろん夜叉衆にとって敵以外の何ものでもないのですが、高耶さんときたら、結構成政の肩を持っていましたね。早百合の復活は一向宗の罠だと教えてやったり、最期に彼を調伏をしなかったり…。最初は「残虐な奴」とは言ったものの、闇戦国の争いなどより、自分自身の決着をつけようとする成政に、高耶さんは感情移入してしまったのでしょう(直江は直江でまた別の意味で感情移入していましたが)。そういう高耶さんですから、後に赤鯨衆と行動を共にしたのも自然な成り行きだったのかもしれません。

写真は、天守の前から千歳御門の方を振り返って。その向こうに建つ白いビルは富山第一ホテル。
天守の中は、「富山市郷土博物館」になっています。私たちは中には入りませんでした。

高耶さんたちと同様、磯部の土手へと向かいます。

二日目の朝に高耶さんたちが通った「堀を渡る道」というのは、城の南側にあるこの道のことのようですね。
<礼を言って二人は老人と別れた。堀を渡る道を歩きはじめたところで直江が言った。(略) 「戦国時代の富山の武将と言えば、景虎様。あの佐々成政ですよ」 「佐々成政っ? ってまさか、こないだ奈良でやりあった……!」 うなずいて、直江は堀端で毛繕いするアヒルたちを眺めるようにしながら、(略) とにかくもう一度、昨夜の現場に行ってみましょう、と言って、二人は昨夜歩いた道を再び歩きだしていった>(『最愛のあなたへ』45ページ)

富山城址公園は、小ぎれいに整備されています。もしかしたら、5.5巻当時の様子とは少し違っているかもしれませんね。。
堀端にアヒルは…いませんでした。


時刻は、8時31分。雨が止んできました。


写真は、「堀を渡る道」から西の方を向いて。
堀端から天守を振り返って。


雨も止み、風も無く、緑の水に逆さ天守がきれいに映っています。
富山城趾の南の市電が走る道路。この道路を西に行くと、神通川の手前で磯部の土手の遊歩道に入れます。


<二人は霊気の発信源を辿って、街の真ん中の富山城趾を通り抜け、大通りを市電の線路沿いにまっすぐ西にむかって歩いていった>(『最愛のあなたへ』38ページ)


二日目未明、最初に磯部の土手へ向かう一幕、「市電の線路沿い」の大通りというのが、この通りです。
その大通りをしばらく歩いてきました。


このすぐ先は富山大橋です。富山大橋の上も市電が走っています。広島の相生橋や高知の潮江橋を思い出しますね。路面電車が走っている街というのは、やはりいいものです。
磯部の土手の遊歩道への入口を一旦通り過ぎまして、富山大橋までやってきました。神通川の河川敷が広いので、橋も随分長いですね。


ここには、早百合と向き合う覚悟をした成政が立ち寄っていました。


<成政は神通川にかかる橋のたもとに立って、闇のなかに早百合の発する強力な“気”の光を見据えていた>(『最愛のあなたへ』94ページ)
富山大橋のたもとから、一本榎の方を向いて。↑のシーンでは「富山大橋」の名前は出ていませんが、成政も富山城趾→磯部の土手へと移動していましたので、「神通川にかかる橋」はこの富山大橋とみて間違いないでしょう。

写真中央奥の、木が茂っている辺りが、早百合が吊るされたという一本榎があった場所です。

写真で、右が神通川、左の方、住宅地の中を細い松川が神通川と並行するように流れていて、その松川沿いの土手が「磯部の土手」になります。
富山大橋から少し戻りまして、松川沿いの遊歩道入口にやってきました。

<神通川にかかる富山大橋の近く。その支流、松川沿いに桜並木の散歩道のような道がある>(『最愛のあなたへ』39ページ)

写真では、「土手」であることがよくわからないかもしれませんが、下を流れる松川より数メートル高い土手があり、その上が遊歩道になっている形です。道沿いは桜並木になっていて、散歩するにはなかなか良さそうな道ですね。まあ、その長閑な道の一角に恐ろしい伝説があるわけですが…。
遊歩道入口に石碑がありました。次のように描かれています

「磯部の堤と呼ばれるこの松川の堤防は、古くは神通川の堤防であり、各所に昔の面影を残している。、昔の神通川は、大雨のたびに氾濫し、磯部をはじめとする付近一帯は、しばしば水害に見舞われていた」

…つまり、松川は以前の神通川だった、ということなのですね。前出の地図を見て頂けるとわかりますが、松川(以前の神通川)は富山の市街地を大きく蛇行するように流れています。そのため、水害が多く、明治時代になって河川改修が行われ、神通川は現在のほぼ真っ直ぐな流れになったそうです。一方元の神通川の流れは、一部が埋め立てられて小さな流れとなり、現在の松川になった、ということなんだそうです。
<例の場所は「磯部の土手」と呼ばれるところで、大正天皇が桜を植樹したことにちなんで、長い桜並木がつくられたと言う、すぐそばを神通川が平行して流れ、土手の裏側は緑に覆われた護国神社の敷地となっていた>(『最愛のあなたへ』45ページ)

二日目昼間、高耶さんたちが二度目に磯部の土手を訪れた際の描写です。護国神社はもう少し先です。桜の枝が遊歩道を覆うように伸びて、花見の時期はさぞかしきれいでしょうね。

<松川の上を蛍の群れのように鬼火が飛んでいる。≪邪気≫が濃密すぎてそれ以上は近寄れない。思念派が発せられているのは、その向こう。小さな橋のたもとに、二本の大きな榎が立っている>(『最愛のあなたへ』39ページ)
↑は二日目未明、思念派を辿って最初に磯部の土手へやってきたシーン。その「小さな橋」というのが見えてきました。


遊歩道入口から歩くこと数分。小さな十字路のようになっている場所があります。右は、松川を渡る橋になっていて、橋のそばには水門が設けられています。左へ行くと、護国神社の方へ下りられます。


一本榎(の二代目の二本の榎)は、この手前左角にあります(写真に写っている太い幹が二本の榎のうちの一本)。
二本の榎と案内板。

<無実の早百合はそこにあった一本榎に吊るされて「あんこうの吊るし斬り」のようにして殺されたという。(略) 里人は彼女を吊るした一本榎には早百合の怨念が染みついていると信じ、「一本榎を斬ると祟りがある」と恐れた。(略) その一本榎は昭和二十年の富山空襲で焼夷弾に焼かれて枯れたが、現在はその種が落ちて育った二代目の二本の榎が育って、桜並木の真ん中に大きく枝をはっている>(『最愛のあなたへ』47ページ)

石碑は、「磯部のさくら」と書かれたもので、桜並木を記念するもののようです。その横の案内板の方に「一本榎」の伝説が書かれています。

実際のところ、この伝説については、成政の後に富山を支配した前田家が広めた噂だという説もあり、真偽のほどはわからないようですね。
来た道を振り返るアングルで。

ミラージュでは、ここに、早百合の生首が浮かんでいたわけですね…。

まあ、直江が高耶さんに初めてちゅうしたのも、ここなわけですが…。
松川に架かる橋と水門。この橋の向こうは神通川です。

<「成政は、過去を利用されて滅びたのではござらん……(略) あの者は、ただおのれの意志で、おのが決着をつけたのですよ」 立ちつくす高耶を一瞥して、頼廉は土手の上を橋のほうへ、歩みさっていった>(『最愛のあなたへ』117ページ)

成政が早百合にやられた後、頼廉が去っていった橋というのは、この橋のことのようですね。
橋の上から松川を見下ろして。


ここに、蛍のように鬼火が飛んでいたと…。
土手の上から、松川とは反対側を向いて。榎のすぐ脇から護国神社の方へ下りる道があります。

<「次は、敵同士としてお会いしましょうぞ。親愛なる上杉のおふた方」 そう言い残すと、高坂は土手をおりて、闇のなかに去っていった>(『最愛のあなたへ』118〜119ページ)

高坂が去っていったのは、頼廉とは反対側、この護国神社の方へ下りる道だったのだろうと思われます。
その護国神社の方へ下りる道ですが、下りてすぐのところに、「早百合観音祠堂」というのがあります。

歴史はそんなに古くなく、戦後に、早百合の成仏と、富山大空襲の犠牲者の成仏を願って建てられたものだそうです。

普通の民家のように見えますが、案内板がありますし、門も開いているので、中に入らせて頂くと、奥に小さな祠がありました。
さて、一旦、榎のもとに戻りまして…。ここは、そう簡単には終わらせられないスポットでしたね。

<「人を好きになるという気持ちは、それだけ恐ろしいということですよ」 高耶が直江を見る。直江は榎に手を触れ、広がる枝を見上げた。「よくある感情です……」 「…………」 「だれかに奪われるくらいなら、この手で殺してしまおう。だれかに触れられる前に、殺してしまいたい。――独占欲が高じると、愛情なんてものはすぐに殺意に変わってしまうんですよ……」 (略) 「おまえも……だれかをそんなふうに思ったことあるのか」 見つめかえしていた直江の瞳が、すうっと細くなる。いつになく怖いまなざしに、高耶が一瞬、おびえたようだった>(『最愛のあなたへ』49ページ)

早百合伝説を聞いて成政を非難する高耶さんに、直江が語るシーン。高耶さんが記憶を失くして換生したことに、直江はほっとする反面、どうしようもなく憎く思うこともあったでしょうね。「おまえもだれかをそんなふうに……」なんて無邪気に聞かれたら、狂犬化してしまうのも致し方ない気がします。
<「土手には二人だけが取り残された。川音が耳にかえってくると、高耶はふたたび成政の亡骸に目を戻した。「直江」と高耶が呼んだ。はい、と答えると、高耶は成政を見たままちいさくつぶやいた。「おまえは、……こんなふうになるなよ。(略)おまえは……オレを守って真っ先に、こう、なりそうだから……」>(『最愛のあなたへ』119ページ)


<「私を……縛ってください……」 直江は、うめくようにそう告げた。「あなたの鎖で、もっと私を縛りつけてください。そうしたら……、二度とあなたから離れない。あなたに殺されるまで、決してだれからも殺されない」 (略) 「……おまえ……」 呟きかけた彼の唇に、今度こそ、本当に、その唇を重ねた。驚いて、突き放すように高耶の指が動いたが、それを阻むように、直江はその手を握りこんだ。後悔する……。そう思ったが、もうどうすることもできなかった。けれど、それ以上何もできないことも、彼は知っていた。あなたに見つめかえされる前に、舌をかみきってしまおうか。そうしたら楽になれるだろうか。何も見えない。苦しくて、生きてゆけない。あなたのすべてを、むさぼるように愛したい>(『最愛のあなたへ』120〜122ページ)
高耶さんは記憶を失くしていますけれども、直江にとっては、昭和編の時からずっと続いているんですよね…。景虎様を十何年も喪失していて、見つけたら見つけたで、こんな無垢な少年になっていて…。考えてみれば、狂犬なんて自嘲していますが、よく我慢していたと言えるかもしれません。

この磯部の土手は、高耶さんのファーストキス(かどうかは謎ですが)が奪われた記念すべき?場所ですね。
 

時刻は、9時16分。本日のミラージュツアーはこれで終了。随分早いですが、富山市街地で、他に作中に出てきた場所もないんです…。

そう言えば、高坂とお茶をした喫茶店というのも作中にありましたが、作中の描写にしっくりとくるような位置(磯部の土手の近く)にはそれらしい喫茶店は見当たりませんでした。

ミラージュツアーの部分だけ読みたい方は、後編へどうぞ(魚津が残っています)。

写真は、作中に名前だけ出てきた「護国神社」。折角なので、立ち寄ってみました。
駅まで戻る間に、超低床の路面電車を見ましたよ。セントラムという愛称だそうです。


富山と言えば、この近代的なデザインの路面電車ですよね。なぜか北陸富山の街には似合う…。


高知にも路面電車は走っていますが、高知には似合わなさそうだな、こういうの。
10時05分、富山駅に戻ってきました。

富山城趾と磯部の土手を見て回って2時間ほどですね。

深夜バスで早朝到着すると、行動開始が早いというのも利点です。

先ほどはロッテリアで飲み物を飲んだだけでしたので、中途半端な時間ではありますが、ブランチといきましょうか。
富山のブランチ、「白えび天丼定食」1,260円。

駅中の「白えび亭」にて。

富山に来たらやはり白エビは外せません。香ばしい白えびの天ぷらに、甘辛いタレがかかって、食欲をそそります。
お腹を満たした後は、相方の行きたいところに付き合うことに。


やはり一度は乗っておきたいということで、路面電車に乗って改めて富山駅を出発。
路面電車で富山大橋を渡り、「富山トヨペット本社前」という電停で下車。


そこから少し歩いて、「富山県立水墨美術館」にやって来ました。


日本の近代以降の水墨画を中心に展示している美術館です。
見終わって、カフェブレイクして、まだ午後1時。


もう一ヶ所、相方の行きたいところに行くために、今度は歩いて富山大橋を渡ります。


いつの間にか、青空が広がっていました。
富山大橋を市街地へ向けて渡って、最初の信号を南に入ると、写真の「ブルー・トレイン」というちょっと有名な喫茶店があります。店内に鉄道模型が走っているという、鉄道ファンに人気のお店らしく、私はテレビで見たことがありました。たまたまこの店の前を通って、ああ、ここにあったんだ、と。

そして、ここ、実は、磯部の土手からそう遠くない場所なんですよね。高坂が高耶さんと直江を連れてきた喫茶店がもしここだったら――。「ゆっくり語りあいたかったのですよ」と高坂が言ったそばから鉄道模型がシャーッと通り過ぎたりなんかして…。まともな話ができなさそうですね。
雨は上がりましたが、今度は陽が差してきて、結局傘を差して歩くことに。
かなりの距離を歩いて、富山県立近代美術館に到着。


富山まで来て美術館めぐりって何だよ。どこの有閑マダムだよ(笑)。


オレはもう…何見たか忘れました…。
美術館を2か所回り、ようやく陽が傾いてきました。


再び富山城趾の辺りまで戻ってきて、時刻は16時45分。


写真は富山城趾堀端に咲く花。富山の街は道端によく手入れされた花が植わっているのがとても印象的でした。


お昼が早かったため、夕食も早い時間で予約を入れてあります。富山駅南口から歩いて10分弱のところにある、「だい」という居酒屋さんへ。

居酒屋「だい」は、雑居ビル2階にあるお店(外観撮り忘れた…)で、食べログで見ると、かなりの高評価。それだけあってか、開店(17時)と同時刻からの予約ですが、18時30分までという時間制限つきです。まあ、1時間半あれば、十分楽しめますけどね。
写真は左上から時計回りに、「白えび桜香り仕立て」、「ばい貝」、「さわらの藁たたき」、「ゲンゲの天ぷら」。白えびの桜香り仕立てというのは、このお店の名物らしく、確かに力作でした。桜の香りがするオイルをかけて頂く、白えびのお刺身です。甘みが引き立って、美味です。ばい貝は、魚津産。貝が好物の私は、これさえあれば、いつまででもちびちびやっていられます。さわらも魚津産。脂が乗ってて、新鮮。ゲンゲは、あまり知られていないかもしれませんが、富山ではよく食べられる深海魚です。ぬめりのあるゼラチン質の魚で、コラーゲンが豊富らしいです。干物は食べたことがありましたが、天ぷらは初めて。脂の乗った白身魚といった感じで、とても美味しいです。頂いた日本酒は、富山の地酒「満寿泉」。北陸は酒も旨いんだな。

本日、何度目かの富山駅。


時刻は、18時25分。


一軒目を終えて、外はこの明るさ。富山の夜はまだまだこれから。
ということで、先ほどの「だい」はオードブル。



今度はちょっと腹の足しになるものを、と、駅中の「すし玉」という回転すしへ。
金沢なんかもそうですが、回転ずしと言えども、値段だけ見ればそれほど安くはない…。ただ、ネタのレベルを考えれば、それでも安いのだろう、という気がします。


左は、私が食べた活ばい貝とかわはぎ(肝乗せ)。右は相方が頼んだ「朝とれ地物盛り11巻」。


富山湾の実力を否が応にも堪能させて頂きました。
次は、富山駅のすぐ目の前にある「CiCビル」の地下にある「あらさん」というちょい呑み居酒屋。



写真は富山駅前から交差点向こうのCiCビルを向いて。駅前には、α-1、エクセルホテル東急といったホテルもあります。

もうお腹が空いているわけではないですが、もう一杯呑んで、軽くつまめるところ…ということで、こちらの「あらさん」にやってきました。左上から時計回りに、あらさんのカウンター、「能登産の岩もずく」、「りんごと甘酒のアイスクリーム」、「きぬかつぎ」。そして、この日の〆のお酒は「成政」です。成政…。手作りだというりんごと甘酒のアイスクリームがものすごく美味しかったです。

いい加減満足して、予約してあるホテルに向かいます。この日の宿は、ドーミーイン富山。富山城趾の少し先にあります。


写真は、朝も撮ったアングルで。右手前方に富山城趾、通りの左側に富山第一ホテル。
富山城はライトアップされていました。


鉄筋コンクリートの模擬天守とのことですが、こういうのが町にあるのとないのとでは、やはり雰囲気ががらりと変わってきますね。
20時50分、ドーミーインに到着。

三軒も回ったわりには、随分と早い時間です。でも、前夜は夜行バスでしたし、この日は結構歩き回ったので、早めに休むことに。

宿泊料金は、朝食なし、ダブル、クーポン800円利用で、7,690円(二名分)。常に貧乏旅行の私たちにとっては、これでも安い方ではありませんが、ドーミーインはきれいですし、何といっても天然温泉があるので、ここに決めました。

そして、無料の夜泣きそばをちゃっかり食べるオレら(さすがに二人で一杯にしましたが…)。
愛用のお遍路万歩計を確認すると、3万歩超え。


因みに、少し前からこの万歩計を使用していましたが、誤って洗濯してしまい…、実は二個目です。


二日目は後編にて。

2017.08.27 up



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