チャンチャン劇場

高耶さんの調伏修行・其四 〜破邪顕正のチョーブク力発動編





これは高耶さんがまだ上杉景虎としての記憶を取り戻す前の話である。
調伏すらままならぬ高耶さんは、教えを乞うた夜叉衆の三人から次々とデタラメな調伏技を見せつけられ、すっかりやる気を削がれていた。
もうこれはほとんど悪質ないじめと言っても差し支えないだろう。
自分は精一杯努力しようとしたのに…。
冥界上杉軍を率いていたという総大将の威厳は一体どこへ行ってしまったのか。
やっぱり自分は上杉景虎なんかじゃなく、ただの元ヤン・仰木高耶でしかないのではないか。
夕陽に照らされた川原で独り、そんなことを取りとめもなく思う高耶さんの元へ、あの男が近づいた。



直江: 高耶さん、こんなところにいたんですか。探しましたよ。

高耶: な、直江っ。 来るな! オレはもうあんな修行は二度とごめんだ!

直江: 高耶さん…。

高耶: オレはきっと景虎じゃない。だからもう放っておいてくれよ!

直江: あなたは景虎様です。

高耶: そんな証拠どこにあるってんだ!

直江: ありますよ。晴家から聞きました。あんなにたくさんの色欲霊を虜にするなんて、景虎様以外考えられません!

高耶: それだけかよ…。

直江: いえ、まあ、その…(ごにょごにょ)。ともかく、あなたは景虎様なんです。さっきの修行はやり過ぎました。実は皆で反省したんです。あまりにも無謀過ぎたのではないかと。

高耶: 直江…。

直江: あなたは私たちの主君です。私たちを導いてくれる大切な旗印です。どうか、そのことをお忘れなきよう…。

高耶: いや、オレも悪かったよ。 オレがこんな態度じゃいけないんだよな。もっとしっかりしねえと…。

直江: 高耶さん…。では、今度こそまじめに調伏の基礎の基礎からもう一度やり直してみましょう。

高耶: ありがとう、直江。オレ、がんばるぜ。

直江: 印を結ぶところからです。いいですか、後ろから失礼します。手を出して下さい。こう、合掌するようにして…小指同士を交差させて…。

高耶: こ、こうか? って、何かちょっと近いんだけど…。

直江: ちゃんと集中して下さい。もっとここを、こうして…。

高耶: おいっ、耳に息を吹きかけんな。てか、何関係ないとこ触ってんだよ。後ろから変なモン当たってるぞ!

直江: お気になさらず。さあ、あなたの×××をもっと××に…(ハァハァ)。

高耶: ア…バカ。やめろって…。

直江: ちゃんと言うことを聞かないと、調伏できませんよ?

高耶: オレはむしろ今お前を調伏したいがな。ん? 何か今草陰から光るものが…あれは、カメラのフラッシュじゃないか!?

高坂: フハハハハ…。バレてしまっては致し方ない。さあ直江、もっと景虎にいい顔させてみせろ。それを写真に収めて全国のミラジェンヌ共に売りさばけば、武田の活動資金は安泰というものよ。

高耶: 高坂、てめえ…。直江、お前まさかこいつとグルじゃねえだろうな!?

直江: 冗談じゃありません。誰がこんな奴と。高坂、貴様…いくらだ。いくら出せばさっきの写真を売ってもらえる!?

高耶: な、直江ぇ!!(そんなもん買ってる場合か)

直江: 高耶さん、後ろから誰かもう一人…。あれは、長秀!

千秋: よう、武田のご家臣さん。うちの大将使って資金集めたあ感心できねえな!

高耶: 千秋! やっぱお前、いい奴だったんだな! この二人、何とかしてくれよ。

千秋: 任しときな。武田さんよう、さっき撮ったフィルムはこっちに渡してもらおうか。うちの大将は上杉専属なんだよ。写真は上杉プロダクションから出させてもらうぜ。(カメラを構えて)ほら、直江、続きだ続き!

高耶: 千秋、お前もかっ!

千秋: 仕方ねえだろ。 お前も大将ならせめてそんくらいは協力しろよ! ったく調伏もできねえくせによ。正義の討伐軍ってのは金かかんだよ、金!

綾子: ちょっとあんたたち、自分の主君にそんなことさせて恥ずかしくないの!?

高耶: 綾子姐さん! 頼む、オレをこいつらの魔の手から救ってくれるのはもうあんたしかいねえ!

綾子: まったく、どいつもこいつも手前勝手な野郎ばかりね。いいこと? あたしが戦国武将の家臣としての真の生き様を教えてやるわ!

高耶: ね、姐さん? もしもし?(何脱ぎ始めてるんだ?)

綾子: さあ、撮るなら撮りなさい! この柿崎晴家、主君の前に身を呈して犠牲になるわ!(何ならもう一枚脱いでもいいのよ?)

一同: ……。

直江: さ、高耶さん。続きをしましょうか?

千秋: 直江、いいぞ。もっと密着しろ! もっとだ、もっと! あ! 武田は撮るな!

高坂: フン、撮ったもん勝ちだ。

綾子: ちょっとあんたたち! 何あたしを無視してんのよ!!

高耶: だーー!! お前ら、いい加減にしろぉ!! バイッ!(景虎様怒りのオーラ) のうまくさんまんだ・ぼたなん・ばいしらまんだや・そわか…南無刀八毘沙門天、悪鬼征伐、我に御力与えたまえ! ・・・チョーーブクゥッ!!

一同: ひええ〜〜…(どこか遠くへフェイドアウト)。

高耶: あ、あれ? チョーブクって、換生者には効かないんじゃなかったっけ? ま、いっか、細かいことは。さて、宿題もあるし、そろそろ帰ろっと。



チャンチャン。






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●あとがき●
破邪顕正のチョーブク力発動編、またの名を「上杉夜叉衆終了のお知らせ」でした。
いいのか、終了させて(笑)。
まあ彼らなら何をしてもカムバックしてきそうです(特に直江)。
がんばれ夜叉衆! がんばれ高耶さん!
覚醒の日は近い!(ホモとしての)