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高耶さんの調伏修行・其三 〜総受地獄編





これは高耶さんがまだ上杉景虎としての記憶を取り戻す前の話である。
調伏すらままならぬ高耶さんは、直江からは理不尽とも言うべき無謀な修行を課せられ、千秋からはコケにされた上に到底真似できぬ(真似たくない)離れ業を見せつけられ、今や絶望の淵にあった。
だが、諦めてはならない。
こんな状態では自分を総大将に選んでくれたという謙信公に申し訳が立たない。
夜叉衆には、もう一人いるではないか。
最後の砦とも言うべき女性(?)、綾子だ。
冷静に考えてみれば、自分以外の夜叉衆三人の中で多少なりともまともそうなのが彼女だ。
なぜ初めから彼女に教えを乞わなかったのだろう。
高耶さんは激しく後悔しつつ、一縷の望みを抱いて綾子の元へと駆け込んだのであった。



綾子: 可哀想に、景虎。酷い目に遭ったようね。

高耶: そうなんだよ、姐さん。やっぱわかってくれるのは姐さんしかいねぇよな。オレどうかしてたぜ。あんな野郎二人に手解き頼むなんて。

綾子: そりゃそうよ。わかるわ、あんたの気持ち。あいつらときたら、ほとんど怪物じみてるもの。

高耶: やっぱそう思う? なんかオレ、すっかり自信なくしちまって。

綾子: あたしのところに来たからにはもう大丈夫、安心なさい。

高耶: 頼れるのは姐さんだけだ。

綾子: 女歴二百年以上の美女戦士が懇切丁寧に指導してあげるわよん(ウインク)。

高耶: ちょ、ちょっと心配だけど…よろしく頼むぜ!

綾子: じゃあ、早速いくわよ。景虎、この辺りに満ち満ちている邪気、あんたにもわかる?

高耶: ああ。さっきから何かこうビンビン来てるぜ。

綾子: さすが景虎、記憶はなくても鼻だけは効くみたいね。

高耶: まあ虎だからな…ってオレに言わせるなよ!

綾子: なぁにあんた、ノリツッコミとかするキャラだっけ?

高耶: いや、何か前の二人を相手して調子狂った…。

綾子: なるほど。でもどうやら今回はそんな余裕は無さそうよ。ここの怨霊たち相当飢えてるみたいだから。

高耶: だな。いつの間にか武者の霊たちに囲まれてるし。

綾子: 怨霊ってのはね、生前の怨念とか無念とか、果たせなかった想いの塊みたいなもんなの。理性とか知性は皆無よ。ほとんど本能で動いているの。中でも、ここの怨霊はちょっとタチが悪いわね。

高耶: タチが悪いって…?

怨霊A: そこの若ぇの〜〜。

高耶: うわぁ、怨霊が喋った!

怨霊B: そこの美味そうなべっぴんさんよ〜〜俺らの相手してくれろ〜〜。

綾子: ふん、やっぱりそう来ると思ったわ。こいつら色欲霊よ。まああたしみたいな色っぽい女は素通りさせないってつもりなんでしょうけど、相手が悪かったわね。景虎、危ないから離れてて…って、え? どういうこと!?

高耶: ぎゃーー! な、何でオレ!? 姐さん助けてぇー! 色欲霊がぁぁ!!

色欲霊の皆さん: へっ、あんな枯れかかった年増女よりこっちのぴちぴち兄ちゃんの方がいいに決まってるだろ。なぁ兄ちゃん俺らとイイコトしようぜ〜〜。

高耶: やめろー! オレに触んな!! 姐さん、早く調伏で助けてくれよ・・・ね、姐さん?(何かこめかみに血管が…)

綾子: だぁれが枯れかかった年増女ですってぇぇぇ!! あんたら年季の入った女の怖さってものを知らないみたいね。今すぐ思い知らせてやるわ! オラオラオラオラ!!

高耶: 姐さん…つ、強ぇ。素手で怨霊吹っ飛ばしてる…。

色欲霊の皆さん: ひぇぇ〜〜か、勘弁してくれぇ〜〜。

綾子: オラオラ! まだまだこれからよ。不届者はあたしのアッパーカットで調伏してやるから覚悟なさい!

高耶: 姐さん? オレ、そういう調伏が見たかったんじゃなくて…。ギャァ! あっちからも新手の色欲霊がぁ…何でまたオレに向かって来んだよ、ちくしょう!

綾子: 景虎! あんたもこれくらいの力がなくちゃ、日本の平和と自分の貞操は守れないわよ!

高耶: オレ、夜叉衆辞めてもいいかな…?(滝涙)



チャンチャン。






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●あとがき●
総受は高耶さんの宿命とは言え、こんな夜叉衆嫌ですね。
よくわかります、高耶さん。
次回、いよいよ総大将辞表提出か!?