チャンチャン劇場

高耶さんの調伏修行・其二 〜インターナショナルCHOBUKU編





これは高耶さんがまだ上杉景虎としての記憶を取り戻す前の話である。
調伏すらままならぬ高耶さんは直江から理不尽とも言うべき無謀な修行を課せられ、ほとんどなかった自信を更に喪失させるはめになった。
しかし、このままでは冥界上杉軍総大将の名折れだ。
高耶さんは修行に付き合わせる相手を選ぶことにした。
ターゲットは千秋である。
この男、何かと鼻につくことも多いが、腕は立つし、実は頭もかなりいいらしい。
真面目そうな顔をして意味不明な言動を取る直江と違って一応信用はできそうだ。
そう思い、ここはひとつ景虎として覚醒を果たし、今までみんなに馬鹿にされてきた分を取り返してやるんだ!と意気込む高耶さんであった…。



千秋: おいダメ虎、お前、直江の修行をボイコットしてきたんだってな。

高耶: ああ。あれは悪夢の修行だったぜ。あんなデタラメな修行じゃいつまで経っても景虎の記憶と実力は取り戻せねぇ。

千秋: まーなー。わかるぜ。あの変態マゾヒスト狂犬野郎と一緒にいたらこっちまで調子狂う。てか、あんな野郎と四百年連れ添ってるお前が一番マゾだっつう説もあるけどな。

高耶: それを言うな、千秋。オレ自身が一番信じらんねぇんだよ。よくあいつと四百年も一緒にいたよな。景虎って一体どんな奴なんだ!?

千秋: まぁ、お前ら主従でずっとSMごっこやってた感があるからな。意外とお似合いなんじゃねぇの?

高耶: 冗談じゃねぇ!

千秋: しかし、今回はまだ「大人の本気」スイッチが入らなかっただけいいんじゃね?

高耶: 何だその「大人の本気」スイッチって?

千秋: あー何つうか、その…まあ、知らない方が幸せってことも、世の中にはあんだよ。

高耶: 何かオレ、景虎に戻るのちょっと怖くなってきたんだけど…(嫌な悪寒がするぜ)。

千秋: 今更怖気づいても仕方ねぇ、気を取りなおして景気よく調伏と行こうぜ!

高耶: お、おう。そうだったな、チョーブクだ、チョーブク! だけど、ここ歌舞伎町だろ? こんなとこに怨霊が出るのか?

千秋: 出るとも、わんさかな。怨霊つっても骸骨武者みてぇなのばっかじゃねぇんだぜ? あそこ見てみろ。

高耶: お、いるいる。何かフツーの霊だな。

千秋: だろ? 俺たちの仕事は闇戦国絡みとは限らねぇ。この世にはいろんな霊がいて、中には生き人に危害を加えるものもあるから、そういうやつらを調伏してあの世に送りつけるのも、夜叉衆の重要な任務ってわけだ。

高耶: 意外とまともなこと言うんだな、お前。

千秋: ったりめぇだ! こちとら、てめぇみてぇに記憶なくして調伏から修行しなおしてるのほほん大将とはわけが違うんだ。

高耶: なんっか腹立つな。お前、オレの臣下じゃねぇのか!?

千秋: うっせぇよ、このタコ! そんなに尻尾振って欲しければあの駄犬と絡んでろっつうの! いいか、そこでとくと拝見してろ、俺様の華麗なまでの調伏技を!!

高耶: へいへい、わかりましたっ。

千秋: バイ! のうまくさんまんだ・ぼだなん・ばいしらまんだや・そわか…

高耶: お、これだ、これ。オレが見たかったのは(パンチラとかいい加減にしろっての)。

千秋: 南無刀八毘沙門天、悪鬼征伐、我に御力与えたまえ! …調伏ッ!!

高耶: …っておい、消えてねぇぞ、霊が!

千秋: な、何っ!? 調伏力が効かないとはまさか一向衆か? いや、違う。これは…そうか、わかったぞ。

高耶: 何だ、どうした!?

千秋: こいつら日本人の霊じゃねぇんだ。天下の歌舞伎町だからな、インターナショナルなんだよ。日本語で真言唱えたって通じやしねぇ!

高耶: 何ぃ!? じゃ、じゃあ一体どうしろってんだよ!? そう言ってる間にやつらこっちに気づいたぞ。おい、襲いかかって来るじゃねぇか! 早く何とかしろ!!

千秋: 慌てなさんな。よし、どうやら相手はフランス人のようだな。

高耶: ギャーー! 来たぞ、千秋! 早くしろーッ!!

千秋: ノンマクサンマンダ〜ン・ボダナ〜ン・マドモアゼ〜ル・フランボワ〜ズ・セボ〜ン・セシボ〜ン・デュボボボ〜ン…

高耶: 何ボンボン言ってんだてめぇ!(フランス語風にデタラメ言ってるだけだろうがぁ!!)

千秋: CHOBUKU!! よっしゃぁ、一人目調伏完了!

高耶: って嘘だろ、おい! マジかよッ!? 霊が消えてる!

千秋: お次は…っと、中国人か。おいバカ虎、てめぇも少しは俺様を見習って手伝え!

高耶: できるわきゃねーだろ、そんなの!!

千秋: ウォーシーリーベンレン・チンジャオロースー・ガンシャオシャーレン・シェイシェイザイチェン・アチョー!!

高耶: ま、まじで調伏してやがる…。

千秋: 真言なんてひとつの形に過ぎねぇかんな、要はハートだ、ハート。どうだ景虎? 少しは勉強になったか?

高耶: 何かオレ、お前らについてく自信ますますなくなってきたんだけど(呆然)。



チャンチャン。






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●あとがき●
またしてもバカですみません。
千秋なら「アチョー!」とか言いながら本当に調伏しちゃいそうだとか思いませんか?
つか、真言って元々日本語じゃないっすね…。